巨大な建造物などを梱包する作品で知られる、現代美術家のクリストとジャンヌ=クロード。世界中でさまざまなプロジェクトを手掛けており、最新のプロジェクトが「包まれた凱旋門」です。
2021年9月に実現した「包まれた凱旋門」について、構想から実現までをさまざまな記録画像や映像などで紹介する展覧会が、21_21 DESIGN SIGHTで開催中です。
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1935年6月13日、同じ年の同じ日に別々の場所で生まれたクリストとジャンヌ=クロード。クリストはブルガリア・ガブロヴォ、ジャンヌ=クロードはモロッコ・カサブランカの出身です。
1958年のパリでふたりは出会い、共同でモニュメンタルな環境芸術作品を制作するようになります。両者の若い頃のポートレイトは、それぞれが相手を撮影したものです。
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21_21 DESIGN SIGHTでの展覧会は、いつも展示空間が見せ場のひとつですが、本展も同様。
地下ロビーに至る動線上には巨大な写真が展示され、とてもドラマチックです。展覧会のディレクターは、映像作家のパスカル・ルランが務めました。
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クリストとジャンヌ=クロードは1964年にニューヨークへ渡り、オーストラリアでの「包まれた海岸線」、コロラド州での「ヴァレー・カーテン」、日本と米国での「アンブレラ」、ニューヨーク・セントラルパークでの「ゲート」など、世界中でビッグプロジェクトを実現させていきました。
ジャンヌ=クロードは2009年に逝去しますが、二人で構想したプロジェクトの実現に向けて、クリストは創作活動を続けていきました。
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「包まれた凱旋門」は、エトワール凱旋門を16日間にわたって包んだプロジェクトです。銀色のコーティングが施された再生可能な青い布25,000㎡と、赤いロープ3,000mが使用されました。
彫刻には傷が付かないようにフレームで覆われるなど、実現までには入念な準備を要しました。
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展覧会のメインといえるのが、実現した「包まれた凱旋門」を紹介する大映像。
パスカル・ルランによる映像表現は、まるで映画のよう。この巨大プロジェクトの様子が、目の前にあるように迫ってきます。
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実は「包まれた凱旋門」は2020年に実現する予定でしたが、新型コロナウイルス感染拡大のため延期に。クリストは実現に向けて意欲を見せていましたが、完成を見ることなく同年5月に他界してしまいました。
その後、多くの賛同者の協力もあって、ついに2021年9月に実現。当初の構想からは60年という長い歳月がかかりました。
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隣接するギャラリー3には、ギャラリーショップ「21_21 NANJA MONJA」がオープンしました。
今回は、「包まれた凱旋門」をイメージする展示とともに、クリストとジャンヌ=クロードに関連する書籍やグッズが販売されています(ギャラリー3は入場無料)。
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記念碑の代表格ともいえる凱旋門が、布ですっぽりと覆われてしまうさまは、驚き以外の何物でもありません。
ぜひ現地で見たかったものですが、実施期間は、東京パラリンピック閉幕直後の2021年9月18日から10月3日。コロナ禍のパリでのプロジェクトなので、現地でこれを見た日本人はかなり限られるでしょう。
展覧会の会期は約半年と長めですが、お見逃しなく。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2022年6月13日 ]