大英博物館から6体のミイラがやってきた!ヤァ!ヤァ!ヤァ!
本展は世界7都市で180万人を動員した大英博物館の国際巡回展で、英語の副題は「Rediscovering Six Lives」。最新のCTスキャン技術により、包帯を解くことなく解明された、ミイラ6体の健康状態や病歴、包帯の中の装身具・護符などの「Rediscovering(再発見)」を、3次元画像にて紹介し、かつて生身であった古代エジプト人たちに迫ります。
神戸市立博物館
展示構成は[ミイラ1体+関連展示]× 6。Chapter. 1(第1章)と表記せず、Mummy 01(ミイラ01)と表記しているのが心憎いところ。あくまでミイラ、古代エジプト人にフォーカスを当てた展示です。
今回展示される6体のミイラは、古代エジプト文明の後半に作られたもので、ギリシャやローマの影響が伺えるミイラもあります。
本レポートでは3体のミイラを紹介いたします。
展示されるミイラと製作時代(会場パネルをもとに作図)
虫歯の神官・ネスペルエンネブウ氏
ネスペルエンネブウ氏はミイラ製作技術の最盛期である第三中間期のもので本展では一番古いミイラ。語尾のブウが小気味良いので、ぜひ名前を呼んでみてください。
ネスペルエンネブウのカルトナージュ棺
彼はアステローム動脈硬化症、ひどい虫歯に冒されていたことがCTで明らかになりました。虫歯具合からすると口臭もひどかったと思われます。ミイラになれるような裕福な古代エジブト人は食生活が偏りがちで、同じような病歴のミイラが多数。歯医者さんで見るようなX線映像に奥歯が疼きます。
またどのミイラも年齢の割に歯がすり減っているのは、主食であるパンに砂利が入っていたからだとか。小麦粉砂利除去って難しいのですね。
(下段左より)虫害のあるパン、葉の形をしたパン、円形のパン、手跡が残ったパン
さて、関連展示では、古代エジプトの八百万の神々や護符を紹介。人の体に鳥の顔がのった鳥人のトト神やホルス神が精悍でかっこいいです。
ネルペルエンネブウの内臓摘出痕にもおかれた護符・ウジャトの眼
トト神とホルス神による浄化の場面のレリーフ
楽器を奏でるタケメネト氏
本展の紅一点ミイラ・タケネメト氏、下がり眉の表情やわらかな美人で、図録のカバーガールもつとめています。三重の木棺(内棺・中棺・外棺)が全て展示されているのも注目ポイント。
内棺の左胸には、神々の前でシストルムという楽器を奏でるタケネメト氏の姿が描かれています。シストルムは儀式等で用いられた、振るとガラガラ鳴る打楽器。神社の神楽鈴みたいな感じなんでしょうかね。
タケネメトの内棺
楽器シストルム
新時代の子どものミイラ
本展で一番新しいのが子どものミイラ。ギリシャとローマの支配者がエジプトを統治したグレコ・ローマン時代になると子どもミイラ化習慣が増加したそうです。
そしてこのお顔、くだんのミイラ顔ではなくリアル!ローマの影響によって写実的な肖像画タッチになったそうな。ただし、これは多様化の一端であり、古典的なマスクも依然人気があったそうですよ。
子どもといえば、本展は「かいけつゾロリ」とコラボしていて、会場各所にゾロリ解説があって楽しげです。音声ガイドにも画像が表示されるものもあり、わかりやすかったです。
古代エジプト記念イヤーの2022年
今年はツタンカーメン王墓発見から100周年&ヒエログリフ解読から200周年の記念イヤー! ツタンカーメンの黄金マスクや、解読のきっかけとなったロゼットストーンのレプリカも展示されています(撮影OK)。
また日本のみの展示として、サッカラ遺跡のカタコンベ(地下集団遺跡)が一部再現されているので、ぜひ発掘気分を味わってみてください。
ミイラ文化が気になって「ライデン国立古代博物館所蔵 古代エジプト展」にも行ってきました(現在、兵庫展は終わり、福岡・札幌を巡回)。我が家にミイラ図録が2冊、夜な夜な読んで古代エジプトのデザインに魅了されています。
[ 取材・撮影・文:ポラン・シャ / 2022年2月4日 ]
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