アール・ヌーヴォー、アール・デコ期を代表するガラス作家エミール・ガレ。同じ時代、競いあうように高度な技術を持ったガラス作家たちが登場しました。お互いがライバルとして切磋琢磨しながら、独自の技法に昇華させていきます。エミール・ガレとライバルたちがみらい美術館に集結、火花を散らしています。
会場風景
エミール・ガレ
会場に入るとエミール・ガレの優品が出迎えてくれます。1889年と1900年のパリ万博でグランプリを受賞、ガラスの世界でその名を不動のものにしました。
会場風景 エミール・ガレ作品
今回の目玉作品「茄子型ランプ」。 ドーム兄弟がランプを多く制作したのに対し、エミール・ガレはランプをほとんど制作していません。晩年に数点残しただけです。そんな中で、近年フランスで発見された世界初公開のランプ。灯をともすと深くカットした葉脈から光が漏れ美しさが際立ちます。
特別出品 エミール・ガレ「茄子型ランプ」1902年
アール・デコ展(通称)で発表された没後の工房作品。白象は希少性が高く高価です。
特別出品 ガレ* 白象文スフレ花器 1925年 *没後の工房作品は「ガレ」と表記
企画担当の野依良之氏が、特別出品と同様に一押しされた逸品。最晩年に制作された小さな作品ですが、技術全てを凝縮した技のデパートのようだと大絶賛。角度を変えながら見ると技の数々を発掘する楽しみがあります。
エミール・ガレ 海底文アップリケ 花器 1902年
アルジー・ルソー(以下ルソー)
独自の技法を開発したルソー。通常パート・ド・ベールはガラスを粉にして内型・外型の間に詰めて焼成しますが、ルソーは外型だけを使い遠心分離機を用いて、糊を加えたガラス粉を外型に固着成型。これは歯科技工士の経験を活かした唯一無二の方法です。
アルジー・ルソー 「樹木ランプ」
ガラスが薄手に仕上がるので光を透過し美しく人気を博しました。歯科技工士の学校を経営していた故鶴見輝彦氏はルソーを大変愛し、多くのコレクションを所有されました。今回、まとめて見る絶好のチャンスです。
ルジー・ルソー パヒュームランプ
ドーム兄弟
エミール・ガレの一番の好敵手ともいえるドーム兄弟は、繊細な絵付作品が特徴で「ガラスの印象派」と呼ばれています。
会場風景 ドーム兄弟作品
色ガラスの粉で色鮮やかなブルーに発色させたり、金彩を施して表現豊かな作品に。
印象派の風景のような絵付けの作品
独立したガラスケース内の作品は非常に技術が高く彫刻のようです。手前の花器はアール・デコ時代のニーズにも柔軟に対応し制作していた様子が伺えます。
会場風景 ドーム兄弟作品
ルネ・ラリック(以下ラリック)
ジュエリー作家から転身し大成功を収めたラリックは香水瓶などでおなじみですが、今回は大型の人気作品を展示しています。黒の市松模様が弧を描いたような「ダミエ」。透明部分の複雑な質感に注目。酸で処理し繊細に加工された表情に、黒のエナメルが対比され目をひきます。
会場風景 ルネ・ラリック作品
エミール・ガレの技はライバルと比べると、執念のような執拗さがあります。同時代を生きた作家たちは高度な技術に触発され、ガラスの輝きを競い個性をぶつけあいました。そんな作家独自の技術に注目したコレクターの目の輝きも、作品の背後から光ります。自分の「好き」がみつかる展覧会です。
[ 取材・撮影・文:コロコロ / 2021年10月27日 ]
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