日本建築に特徴的な木組は、木と木を隙間なく組み合わせる世界に類をみない技術です。大規模建築から、指物と言われる小物まで多様に利用されてきました。非常に複雑で優れた技術ですが、真のすごさは外から見ただけではわかりません。
どうすれば伝わるのか?「そうだ、分解してしまおう」というのが今回の展覧会です。
国立科学博物館・竹中大工道具館による共同企画展が実現しました。しかし分解しただけではまだ伝わりません。会場には模型や図解、CG画像を駆使し、様々な角度からさらに分解し、木組の中に息づく技術や知恵、美意識を引き出そうとしています。
継手、仕口ってなに?
入口では木組の基本の構造「継手」「仕口」の解説がされています。部材どうしを同じ方向につなげる技法を「継手」、直角方向などに角度をつけてつなぐ技法が「仕口」です。
木組は、丸太を縛ることから始まりました。その後、どのように変化したのか、変遷をたどっています。複雑に組み合わせながら、継ぎ目が見えなくなる精巧な仕上がり。ぜひ目で確かめて下さい。
錦帯橋
木組の巨大な構造物に錦帯橋があります。アーチ構造は石造りによく見られますが、柱のない長さ36mの木製アーチ型は世界に類をみません。1673年、日本では木でチャレンジしました。
横から、下から、上から、様々な角度からじっくりご覧下さい。
積み上げる木組
円覚寺舎利殿で使われる組物を分解展示しています。その数66点。独特な形をした部材が使われ規則正しく積み上げていく様子をパネルや映像で紹介しています。
繊細な木組
大型の建築とは対照的に、繊細で独特な木組の組子です。遠くから見るとダイナミックな山並みが広がります。
近寄ると、直線と曲線で組み合わせた幾何学模様によって構成されています。色は着色ではなく、木が持つ色を利用して微妙なグラデーションを表現しました。
細くて薄い木材を精密に加工し、様々な幾何学模様を構成する高度な技術にため息がでます。発祥は鎌倉時代と言われ、この屏風はこの展覧会のために制作されました。
板や棒状に整えた木材を組み合わせて作るものを指物といいます。板の組み合わせ方のバリエーションと緻密さに驚きます。
不思議な木組
立体パズルのような木組が展示されています。壁面に図解が示されていますが、見比べても想像ができない複雑さです。この構造を考え出し、それを形にしてピッタリと合わせる技術。それによって強度が生まれ支えられ、美しさも生みだしました。
世界に誇れる建築が今も残されていること。それを支える職人の存在を知っていても、その技の真の奥深さまでは見えていませんでした。職人への畏敬の念を抱かされます。
これらの技術、CGや動画で職人自らが語っています。会場に行けない方もオンラインで見ることができます。見てから行く、行ってから見る。分解された木組にいろいろな形で触れることができます。
[ 取材・撮影・文:コロコロ / 2021年10月12日 ]
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