「あやしい絵」展が、大阪歴史博物館で開催中です。
幕末から明治にかけての浮世絵から、「安珍清姫」「淀殿」など歴史上のあまりに有名な題材、藤島武二や上村松園などの有名画家の絵を通して、「名画に隠された秘密(ストーリー)」をさぐります。
「あやしさとは何か?」と見るものに迫る!
展覧会の劈頭を飾り、観覧者を迎えるのは、生き人形です。実際に生きているかのような人形は、確かに美しいのですが、なにか心を揺さぶる「あやしさ」を持っています。
展覧会タイトルの「あやしい」ですが、どんな字を思い浮かべますか?怪しい、妖しい、奇しい・・・。あえて一つの漢字をあてはめず、見るものに委ねられました。「自分にとって、あやしいとは?」を考えながら、展覧会を見たいと思います。
強烈な表現が、見るものを揺さぶる!
幕末から明治にかけて活躍した月岡芳年の凄惨な「血みどろ絵」「残酷絵」が続きます。血を流し、目をカッと見開き、苦悶に顔をゆがめる絵は、見るものの心を激しく波立たせます。
画家は、実際に上野戦争で多くの死傷者を見たといいますから、その鬼気迫る表現に、全身が粟立ちます。
画中のモデルの思いに、見るものが共振する!
残酷な絵から一転、藤島武二の2枚の絵が微笑みます。謎めいたまなざし、愁いをおびた、目を閉じた顔から、モデルが思っていることを、見るものは勝手に想像の翼をはばたかせます。人によって、思うこと、考えることが違うのが、この絵の醍醐味です。
女性の強いまなざしは、見るものに挑む!
島成園は、大正から昭和初期に活躍した女性画家です。その代表作の一つ、「無題」は、彼女の自画像だといいます。ところが、絵にある顔の痣は、成園にはありません。
痣がないのに、あえて痣を描く、彼女の強い、女性としての自意識は、見るものへの挑戦状であるかのようです。今を生きる女性は、彼女からの挑戦状にどう答えますか?
淀殿の決意に、見るものはひれ伏す!
淀殿と言えば、戦国大名浅井長政の娘で、織田信長によって父母を殺され、変遷ののち、秀吉の側室になり、最後は、大坂夏の陣で自害したと伝わります。まさに時代に翻弄された一生を送りました。
右側の絵は、大坂城落城寸前の淀殿です。強い決意のまなざしであるとともに、時代に抗えない諦観さえも感じ取れます。
「あやしい絵」東京展は、会期を1か月残したまま、コロナの緊急事態宣言発出によって臨時休館となりました。
大阪展が、会期終了まで開かれることを切に願います。
会期中、作品の展示替えがあります。詳しくは展覧会公式サイトにてご確認
ください。
[ 取材・撮影・文:atsuko.s / 2021年7月2日 ]
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