一代で太閤にまで昇りつめた豊臣秀吉の立身栄達の物語「太閤記」は、どの時代でも、日本人の心をつかみます。
秀吉が、全国統一を成し遂げた後、一族は政治拠点を大坂に定めました。彼らが、権力と富を手中に収めた30年は、その後の文化、美術に少なからぬ影響を与えました。秀吉とその時代の栄華を感じることができる「豊臣の美術」展が、大阪市立美術館で開かれています。
大阪の地で開催される「豊臣の美術」展
豊臣秀吉像
全国の美術館や博物館で、豊臣秀吉に関する展覧会が開かれることは多いです。しかし、お膝元の大阪市立美術館では、豊臣秀吉に関する展覧会には、今までタッチしてきませんでしたが、秀吉とその一族が大坂にいた時代の美術や文化に焦点を当てた「豊臣の美術」展で、85年の大阪市立美術館の歴史の中ではじめて真正面から取り組んだとのことです。
歴史の教科書によく載っている「豊臣秀吉像」のように知られたものから、今まであまり光が当たらなかったものまで合わせて見ることができます。
章立ての妙味、新鮮な切り口!
「豊国大明神」神号:豊臣秀頼筆
今回の美術展では、「Ⅰ 豊国大明神~天下人、神になる」「Ⅱ 美麗無双~桃山セレブが選ぶ調度・名物」「Ⅲ 大檀那豊臣~御用絵師と寺社・御殿の荘厳」「Ⅳ 太閤追慕~風俗画という記憶」という章立てになっています。
一般的な豊臣秀吉展が、秀吉の立身出世の道筋に沿ったものであるのに対して、今回は、秀吉の死後、彼が「豊国大明神」として神格化されるところから始まります。その新しい切り口がとても新鮮です。
豪華絢爛の黄金趣味!
唐物瓢箪茶入
多くの人たちの羨望の唐物瓢箪茶入や油滴天目茶碗などの名物に、その時代の美意識を感じます。その前に静かに立って、じっと見つめるだけで、時代を超えた美しさに引き込まれそうになります。
黄金の茶室
最後に復元展示されている黄金の茶室は、茶の師匠の利休と秀吉の蜜月と、秀吉の絶頂の象徴です。わび茶の対極にあるといえる黄金の茶室を見るとき、秀吉の剛毅や策略が垣間見える気がします。
昨年は、コロナ禍で、美術展や美術館にとっては、受難のときでした。今なお、どうなるかわからない状況の中で、コロナ以前の生活を取り戻すには、まだまだ時間がかかりそうです。 そんな時、美術品を静かに見るという美術館は、ウイズコロナの時代に、ある意味、安全で安心な場所と言えるのかもしれません。
[ 取材・撮影・文:atsuko.s / 2021年4月2日 ]
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