京都今出川、赤レンガの同志社大学の角を曲がると室町幕府三代将軍足利義満により創建された禅宗寺院「相国寺」の境内に入ります。散椿、紅梅ほころぶ石畳をゆくと相国寺承天閣美術館にたどり着きました。
相国寺承天閣美術館 石畳より
京都五山第二位に列せられる名刹「萬年山相國承天禅寺」は歴代足利将軍家との関わりが深く現在も境内の十三の塔頭寺院と山外塔頭の鹿苑寺(金閣寺)、慈照寺(銀閣寺)などを持ちます。
その相国寺創建600年を記念し、昭和59年に開館したのが「相国寺承天閣美術館」で、国宝5点、重要文化財145点を収蔵し、伊藤若冲や円山応挙など近世絵画の逸品まで静かに鑑賞できる大人の美術館です。
今回、禅と日本文化を「梅」をテーマに展示(14点)と、相国寺の歴史を塔頭を含めた寺宝からたどる展示(34点)という2つのテーマ展示が鑑賞できる展覧会 『相国寺・金閣・銀閣 宝物展 梅の余薫/相国寺の歴史と寺宝』が開催されます。
梅花は漢詩の題材として好まれ、控えめな花型と香りを楽しめることから禅寺と梅の相性も良く、展覧会のタイトル、春を待つ京都のイメージにぴったりです。
第一展示室には墨画が多く並びますが、墨の濃淡で紅梅白梅を表現するなど禅寺らしい柔らかく穏やかな印象。ひときわ華やかな色彩の大壺2点には愛らしい梅花がちりばめられ会場の雰囲気を少し緩めます。
《墨梅図》 玉畹梵芳賛 一幅 紙本墨画 室町時代 十五世紀 慈照寺蔵
(左)梅花紋大壺 野々村仁清作 慈照寺蔵 (右)法花梅枝文大壷 相国寺蔵
十牛の庭に面した回廊を進むと第二展示室。時代を追った相国寺や塔頭の寺宝が並びます。足利将軍室町時代のものから群雄割拠戦国武将たちの信仰を示す書状、近世になると僧侶と絵師の関りから文化の伝承へと祈りの力の継承が見えます。常設の鹿苑寺大書院障壁画など今人気の伊藤若冲の若き筆もゆっくり鑑賞できます。
第二展示室 重要文化財 鹿苑寺大書院障壁画のうち 月夜芭蕉図(常設) 伊藤若冲筆 鹿苑寺蔵
《織田信長朱印状 永禄十二年》 相国寺蔵
《中鶏左右梅図》 三対 伊藤若冲筆 鹿苑寺蔵
天下布武の朱印のある「織田信長朱印状」は等持寺の寺領安堵に関するもの。なかなかの達筆です。
また最後には圧巻の「伏見大光明寺勧進帳」が目を引き付けます。寺の再建に際し、時の全国の武将たちが工費を寄進した一覧で、122名のリストには花押が並び戦国ファンにも必見です。ちゃんと活字が掲示されていますので助かります。
《伏見大光明寺勧進帳》 一巻 紙本墨書 桃山時代 文禄三年(1594)相国寺蔵
戦国武将122名の花押が列挙
寺院と人々の信仰は長い時間を共有し文化となって今私達が目にすることができること、時代を越えた宝物に感動します。
相国寺承天閣美術館は・・くつを脱いでロッカーを利用。(絨毯引き、スリッパなし)今回の展覧会はキャプションが手前のガラス面に張ってあるので読みやすいのが有難い。中庭などもあり、花と陽ざしに包まれた空間です。
コロナ感染予防対策としてマスク・消毒・検温は必要ですが予約制ではなくゆったり鑑賞できます。ミュージアムショップには本展のパンフレット(¥800)をはじめ若冲関連のグッズも並びます。
十牛の庭に面した展示室を結ぶリラックス回廊
ミュージアムショップ
次回展示情報:「若冲と近世絵画」Ⅰ期 2021.4.29~7.25 Ⅱ期 2021.8.1~10.24
今出川通り方向へ出たところには京都で有名なフルーツサンドの店「ヤオイソ」があり、余韻のティータイムを楽しんで帰りました。
すぐ近く ヤオイソのフルーツサンド 木村英輝さんの壁画も素敵
[ 取材・撮影・文:ひろりん / 2021年1月29日 ]
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