タイやメバル、カレイにエイ、サヨリ、カツオ、イカ、タコ、アワビ。まるで水族館の中を
見ているよう。展示された魚たちの絵は、江戸時代に北斎によって描かれたものです。
現在日本は世界屈指の水族館大国であると言われるほど、海にすむ生物を展示した施設や博物館が多く存在しており、神秘的な海の世界へ私たちを連れ て行ってくれます。今日は北斎館も魚たちの楽園に変身し、皆さんを海の世界へお連れしましょう。
島国である日本は、海やそこにすむ生き 物と密接な関係にあり、沿岸部では古くから様々な魚介類、海洋生物を日々 目にすることができました。 江戸時代には〝 魚の文化 〞が大いに発 展したといわれ 、日本橋などの魚河岸を通し江戸近郊では魚の流通も盛んだったと言います。江戸で花開いた寿司や天ぷらなどの食の分野にも、魚文化は大きく影響していたといえるでしょう。またそれは浮世絵の世界へも広がりを見せ、北斎や広重、国芳といった江戸を代表する浮世絵師たちにより魚や海をテーマにした作品も多く作ら れ人気を博しました。
北斎が手がけた絵手本集やデザイン集にも魚介類、海洋生物をモチーフにしたものが多く見られます。文化 11年(1814)に刊行された『北斎漫画』や『略画早指南』、弘化5年(1848)刊行の『画本彩色通』などの絵手本(絵の教科書)にも、多様な魚介類の絵が収載されています。細部まで描かれた魚の鱗や模様、エビやカニなどの複雑な骨格は、絵を練習するには最適のモチーフであったと考えられます。絵手本ではありますが、そのリアリティある描写やユーモアに溢れた内容から、見て楽しむ図鑑のような存在であったともいえ、人々の好奇心、興味を駆り立てたことでしょう。
この展覧会では、北斎が手がけた絵手本やデザイン集を中心に、魚介類をモチーフにした作品を一挙公開します。北斎の描く神秘的な海の世界へ、さあ参りましょう!