彫刻の森美術館では、現代の新しい創作表現を紹介するシリーズの第8 回として、「飯川雄大 デコレータークラブ 同時に起きる、もしくは遅れて気づく」を開催しています。本シリーズは、コロナ禍を経て、4 年ぶりの開催となります。
兵庫県神戸市出身の飯川は、言語や画像を用いた中にも生じる伝達の曖昧さ、感覚の共有不可能性について問い続けてきました。鑑賞者が気づきの中から湧き起こるイメージを繋げ、多様な認識を生み出すことを期待して制作しています。2022 年は国立国際美術館でのグループ展「感覚の領域 今、「経験する」ということ」の参加や、兵庫県立美術で個展「デコレータークラブ メイクスペース、ユーズスペース」を開催するなど、近年活躍が目覚ましいアーティストの1 人です。
本展では、飯川が2007 年から展開している〈デコレータークラブ〉シリーズの新作インスタレーションを中心に展示しています。鑑賞者が作品に能動的に関わることで変容していく空間や物が、別の場所で起きる同時に見ることはできない事象と繋がるインスタレーション作品《0 人もしくは1 人以上の観客に向けて》、誰かの忘れ物かのような《ベリーヘビーバッグ》のほか、一目では全貌をとらえることができない彫刻作品《ピンクの猫の小林さん》が木々の中に潜みます。また、過去に発表した映像作品も展示し、作品に通底する飯川の視点にも迫ります。
飯川の作品は、幅広い来館者層へもアプローチする、可愛らしく、接しやすい表層を持ちつつも、人間のコミュニケーションの不完全さや、時には遅効する気づきそのものへの興味に焦点を当てています。鑑賞者の行為によって起きる偶然をポジティブにとらえ、時間や距離が離れた場所にも出来事を送り届けることを試みます。〈デコレータークラブ〉 は、見るものに行動と思考を誘発しながら展開していきます。
本展の会期は、約8ヶ月です。季節の移ろいとともに、作品の表情も変化していくでしょう。当館の野外美術館の地形や特性を生かして展開していく、飯川の作品を経て、当館の新しい魅力も発見していただけたら幸いです。
(プレスリリースより)