撮影:城野誠治(東京文化財研究所)
ダッフル製壁掛け《うさぎを追いかけるわし》 作者不詳(イヌイト)、カナダ/パングニルトゥング
毛皮交易が衰退するとカナダのイヌイトの女性たちが収入を得る方法の一つとして、都市部に暮らす人たち向けの衣服をつくることが奨励されました。村にダッフル地がもちこまれ、ミシンの技術が指導されました。しかしこのプロジェクトはあまりうまくゆきませんでした。やがてダッフル地からは手縫いの工芸品的なものがつくられるようになり、このなかに壁掛けもありました。卓越した観察眼でとらえたモチーフが、長らく伝えられてきた縫製の技術と独特の色彩感覚で表現されています。1970年代半ばにはイヌイトの壁掛けはカナダの公共施設を飾るようにもなり、版画や彫刻と並んでイヌイトアートの一翼を担うようになりました。
担当者からのコメント
わしの羽根や、ウサギの毛並みの細やかな表現をご覧ください。
耳の先が黒いホッキョクウサギがワシから必死に逃げています。
思わずウサギを応援したくなります。