第4回 椎野晃史(泉屋博古館東京 学芸員)
泉屋博古館東京学芸員の椎野晃史です。泉屋博古館は住友コレクションをはじめとした美術品を保存、研究、公開する美術館で、京都と東京の2館体制で運営しています。僕が働く東京館は、六本木の地にありながら豊かな緑に囲まれた、静かな美術館です。当館のコレクションは青銅器をはじめ、中国絵画や日本の書画、工芸、そして西洋絵画に至るまで、幅広いジャンルの美術品が含まれていますが、東京館では主に近代の絵画や工芸品、茶道具や能装束などを紹介する展覧会を開催しています。東京館は来年で開館20周年を迎えますが、2019年末から大規模な改修工事のため現在は長期休館中で、来年3月にリニューアルオープンする予定です。
実は僕自身、昨年の4月に7年間勤めた福井県立美術館から移ってきたばかりで、こちらの館ではまだ新入りです。休館中は収蔵品の調査研究や、リニューアルオープン記念展「日本画トライアングル」(3/19~5/8)の準備など、バタバタとした日々を過ごしています。主に近代絵画を担当していますが、個々の作品から得られる気づきや刺激をモチベーションに、作品と作品を結び合わせることで生まれる新しい魅力や価値観を大切にしながら企画しています。
今は休館中ですが、先行して美術館併設のHARIOカフェがオープンしていますので、ぜひ遊びにいらしてください。
展示風景
私のおすすめミュージアム
ポーラ美術館
僕の「おすすめミュージアム」はポーラ美術館です。企画展を目掛けて訪ねることも多いのですが、定期的に通いたい美術館の一つであり、それは道中の林道ドライブや帰りの温泉も含め、僕にとって一種のリトリートのようなものかもしれません。
豊かな西洋絵画コレクションや近年刷新されたV.I.など、おススメのポイントを挙げれば切がないのですが、特に建築と周辺環境が一体化した館の在り方に強く心惹かれます。森に溶け込むような館と環境との接続は、自然とアートをシームレスに繋げて見せてくれます。中に入れば、ガラス屋根の下をエスカレーターで地下まで降りていきますが、そのアプローチが自然美を堪能した脳を、アートに触れる脳へとゆるやかに切り替えてくれます。
企画展のほかに、1階のアトリウムギャラリーで行われる現代作家の展示、あるいは最深の展示室で折々に公開される化粧道具など、見どころが多いのも嬉しいです。展示を見たあとは余韻に浸りながら森の遊歩道を歩いて駐車場へと戻ります。ブナやヒメシャラなどの木々が群生する遊歩道は、霧が立ち込めると幻想的でいっそう美しい姿を現します。残念ながら僕は蛇が苦手なので、寒い時期限定ですが。
ポーラ美術館から車で7、8分の距離にある中華料理屋(ポーラ美術館の学芸員に教えてもらった)で、美味しい雲白肉(ウンパイロウ)を食べれば、僕のリトリートは完了です。皆さんもいかがですか?
ポーラ美術館 エントランス
ポーラ美術館 森の遊歩道