日本美術をどのように鑑賞すればいいのかわからない。
そんな初心者に向けて、学芸員のとっておき鑑賞の裏技を紹介する展覧会です。ポイントを紹介します。
空間をつくる
古美術を今、飾るとしたら、どこに飾りますか?
昔は、障子や襖、床の間がありました。今は、ほとんどありません。 では、昔はどう飾っていたのでしょう。 それをイメージできる空間づくりがされています。襖を通ると屏風が登場。
第1章 展示風景
さらに、襖で仕切られた部屋があって、その先にも・・・・
屏風によって、四季すべてが存在するイル―ジョンや、秋の景色が広がります。
第1章 展示風景
小をめでる
第2章 展示風景
この空間に並ぶ様々な小さきものたち。それなのに、精巧さといったら!
ルーペが添えられているので、覗いてみましょう。日本人の手先の器用さ、そして、技術のミニマム化で、世界を席巻した物作りの源泉を見るかのようです。
心で描く
かるかや 室町時代 16世紀 サントリー美術館 【全期間展示】
ヘタウマ漫画が人気です。その評価基準は、何百年も前から存在していました。
リアリティーだけでなく、無邪気で大胆、愛嬌のあるキャラを愛でる感性は、16世紀頃から今に至ります。
《かるかや》は、辻惟雄氏に「心の国宝」と言わしめた作品です。
景色をさがす
第4章 展示風景
焼物の展示は、学芸員が決めた正面の一方向から見るというのが常です。しかし、焼物には四方に「景色」があると言われます。
それは、土と炎が自然につくり出す偶然の産物。その表情はバラエティー豊かで、イマジネーションを掻き立てます。
ぐるりと回って、自分だけの絶景ポイントをみつけてみましょう。
和歌でわかる
かつて日本の生活では、和歌が至るところに溢れていました。 「生き物は、みんな歌を詠む」と言われるほどで、日本美術も和歌を題材にした作品が多くあります。
現代のラップに通じるものがあると言います。
白綸子地橘亀甲文字模様小袖 一領 江戸時代 18世紀 サントリー美術館 【展示期間:9/30~10/26】
君が代は長寿を願う和歌が元になっています。 小袖には、不老長寿の実をつける橘、万年生きる亀甲文様が散らされています。
そして、デザインされた和歌の文字を、身にまとっていました。
風景にはいる
最後は、日本美術の風景の中にググっと入り込んでみましょう。
画面の中に小さな人物がたくさん描かれていることに気づきます。
彼らの目線になって風景を眺めます。高い場所から見下ろしたり、見上げてみたり。 心の中にも入ってみましょう。どんなこと考えているのでしょうか?
ヒントは、画面の中にいろいろあります。
客引きされて、困ったなぁ・・・ 無視しちゃおう。 何やらひそひそ話。話しに加わってみると、状況が見えてくるかもしれません。
第6章 展示風景
東海道五十三次は景色に目が行きがち。鑑賞の裏技は点景人物に着目することです。 彼らの目線になって景色を眺めます。富士山や箱根の山の雄大さがより際立ちます。
川の向こう岸に旅人を運ぶ人、運ばれる人。荷物を下ろす旅人、馬と格闘する人。 江戸時代の旅を一緒に追体験してみると、世界は時空を超えて広がります。
教科書では教えてくれない裏技。裏は無限の想像力で、深まり広がるようです。
[ 取材・撮影・文:コロコロ / 2020年9月29日 ]
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