
欲しい!欲しい!欲しい!まるで駄々っ子のような声が、東京駅のドームにこだましてしているようです。
その声は、名だたる画家や著名人。何を欲したのか?それは大津絵です。
大津絵のコレクターにスポットをあてた展覧会が始まりました。
大津絵とは?
江戸時代、東海道の宿場、大津付近で、手軽な土産物として量産されました。
ユーモアあふれる絵柄が特徴で、全国に広がりますが、安価な実用品のため、多くは残りません。
「鬼の念仏」は有名な画題で、図録の表紙になっています。
映画「日々是好日」のお茶室にもかかっていました。

《鬼の念仏》 神奈川県立近代美術館(麻生三郎コレクション)
ユニークな構成
第1~4章は、明治、大正、昭和戦前、戦後と時代を下り、コレクターを時代で分けて、蒐集家ごとの展示となっています。
大津絵は歴史資料、民俗資料なのですが、日本の名だたる目利きが、魅力を感じ蒐集しました。
そんなコレクターが大津絵に向ける眼差しに注目することで、美術品としての価値を見直そうとしています。
コレクター垂涎の作品

《鬼の行水》 日本民藝館
多くのコレクターが、喉から手がでる思いで、大金を積んだといわれる《鬼の行水》
中でも、柳宗悦はこれを手に入れるために、あの手この手と策を練りました。結果、18年の歳月を経て、やっと手にします。柳自身も絶品と激賞しました。
明治期に収集した浅井忠

第1章 展示風景
明治期から大津絵を収集した浅井忠は、注目のコレクターです。
晩年、大津絵をモチーフにしたデザイン図案を工芸家などに提供し、工芸品制作の推進に寄与しました。没後、所有作品は散逸し、所在がわからなくなってしまいました。
そんな中、ここに展示された作品は、浅井忠の旧蔵品と考えられています。
大正時代、梅原龍三郎の名品

第2章 展示風景
梅原は、浅井忠に洋画を学び、大正期から大津絵の収集を始めました。
浅井の影響も受けていたと考えられます。
梅原コレクションで特筆するべき作品は、中央の《傘さす女》です。他の作品とは一線を画す表現は、一級品の気配を漂わせます。
柳も欲しいと注目した作品で、書画骨董に造詣の深い岸田劉生も一目を置きました。
コレクターとしては後発の柳宗悦
第3章は、大正時代の代表的なコレクター、柳宗悦を中心に展示されています。

第3章 展示風景
大津絵は民藝の一つで、柳宗悦が蒐集したイメージが強いのではないでしょうか?
これまでの流れを見ると、柳はコレクターとしては後発であることがわかります。
柳宗悦は大正末から大津絵を研究し、昭和初期にまとめ、民藝と位置付けました。その功績が、大津絵=民藝という認識を浸透させたようです。

柳宗悦が同じ布で表装した大津絵
大津絵愛の強い柳は、他のどのコレクターよりも表装に力を入れました。自身が所有する丹波布で表装し、軸はバーナードリーチと言われています。

昭和の目利きが収集した大津絵
昭和になると、北大路魯山人、棟方志功 白洲正子なども収集しました。それぞれの目利きが見出した大津絵。美術品としての魅力を探してみませんか?
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