展覧会概要
愛知県美術館(以下、県美)で、「ライデン国立古代博物館所蔵 古代エジプト展」が始まりました。
4月の「大浮世絵展」が途中閉幕、6月の「ジブリの大博覧会」が延期になり、今展も先行する福岡展、札幌展が中止になったので、どうなるか心配していました。
あわせて、同時開催される第3期コレクション展で、新収蔵された若手作家の現代美術作品が初公開されるというニュースもあり、無事開催されてなによりでした。
展示室にて
〈第1章 エジプトを探検する〉
展示風景 ロゼッタ・ストーンのレプリカ
展示室に入ると、まず目に入るのは《ロゼッタ・ストーン》(レプリカ)です。
ナポレオンによるエジプト遠征で発見されたこの石碑により、ジャン=フランソワ・シャンポリオンがヒエログリフの解読に成功したことは有名です。
この章では、出土した遺物の他に、発掘の様子も映像で紹介されています。
〈第2章 エジプトを発見する〉
クウの石碑 ライデン国立古代博物館 Image©Rijksmuseum van Oudheden (Leiden, the Netherlands)
ヒエログリフの表記では、右から左に読む、左から右に読む、上から下に読む、下から上に読むを自由に書けるそうです。
図像の顔の向きで、読む方向が決まるのだとか。鏡文字みたいでデザインとして面白いと思います。
ところで、難解なヒエログリフですが、最近になってGoogle翻訳(Fabricius)で読み書きできるようになったそうです。
〈第3章 エジプトを解読する〉
展示風景 林立する棺
今回、初めて立てて展示された棺を見ました。これまで、棺は横に置かれたものを覗き込むように見るものと思っていたので、とても驚きました。
ミイラは入っていませんが、周囲を棺に囲まれる体験は、相当に刺激的です。
護符とビーズの首飾り ライデン国立古代博物館 Image©Rijksmuseum van Oudheden (Leiden, the Netherlands)
〈第4章 エジプトをスキャンする〉
人のミイラ3体と動物のミイラ1体をCTスキャンした研究成果が展示されています。福岡展、札幌展が中止になったので、ここ愛知展が世界初公開だそうです。
来館の際、土日祝は日時指定のチケットになるので注意が必要です。
チケット購入方法は愛知展公式ウェブサイト(「古代エジプト 名古屋」で検索)でご確認ください。(新型コロナウイルス感染予防対策もお忘れなく)
愛知展の後は、静岡、東京、仙台、山口、兵庫に巡回します。
続いて、第3期コレクション展の作品の一部を紹介します。
県美では美術品等取得基金の特別枠を使い、15名の若手作家から41点の作品を購入しました。今回は、そのうちの35点が展示されています。
《TALIONの子(TALION GALLERYの壁を使って蘭陵王の彫刻を制作する。)》山下拓也 2014-15年
ユーモラスな表情ですが、展示室の空気を支配するかのような存在感です。立体作品の左側のモニターで制作風景の映像作品も見ることができます。
映像を見ると、かなり大胆で、びっくりするような作り方です。
《I am a yellow》水戸部七絵 2019年
作品リストには絵画とありますが、絵の具の盛り上げ方が半端ない厚みになっていて、ほとんどレリーフです。
絵の具を粘土のように捏ねて作るのだろうか、見るからに重そうなので床置きになっているのだろうか、いろいろと興味を惹かれます。
他にも、髙山陽介、横山奈美、山田七菜子、加藤翼、今村文、やましたあつこ、本山ゆかり、小林椋、木村充伯、田島秀彦、近藤亜樹、百瀬文らの作品が展示されています。
若手作家の作品が増えることで、コレクション展の雰囲気も若返り、いつにも増して活気のある展示になっていると思います。古代エジプト展だけ見て帰るのはもったいないと思います。
[ 取材・撮影・文:ひろ.すぎやま / 2020年9月18日 ]
エリアレポーターのご紹介 | ひろ.すぎやま 近現代美術、演劇、映画をよく見ます。 作品を見る時は、先入観を避けるため、解説などは後から読むようにしています。 折々に、東海エリアの展覧会をレポートしますので、出かけていただく契機になれば幸いです。
名古屋市美術館協力会会員、あいちトリエンナーレボランティア。 |
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