あべのハルカス美術館で「奇才 -江戸絵画の冒険者たち-」展が開催中です。
「奇才 -江戸絵画の冒険者たち-」展は、宗達や光琳、応挙などの大家、主流派にとどまらない構成と、江戸、大坂、京に加えて、松前から長崎まで全国の絵師35人が一堂に会する圧倒的な魅力に溢れています。
東京、山口に続く大阪展は、完全版!
今回のあべのハルカス美術館の「奇才 -江戸絵画の冒険者たち-」展は、江戸東京博物館(6/2~6/21)、山口県立美術館(7/7~8/30)に続く、掉尾を飾る展覧会です。
今年の美術展、展覧会の多くが、コロナの影響で、会期の変更などを余儀なくされました。東京、山口の「奇才 -江戸絵画の冒険者たち-」展もご多分に漏れず、作品がすべて揃わないままの開催でしたが、大阪展は、ようやく完全版で開催することができたそうです。
途中、大小計4回の展示替えがありますが、何度見ても飽きない、迫力の展示を楽しめます。
奇才の「奇」は、「奇妙の奇」にあらず!
奇才といえば、今では、世に珍しい、なにか変わった才能のように想像しがちですが、ここでいう奇才とは、「類まれで、優れた」才能だと主催者は考えています。
つまり、新しい表現、思いもよらない表現を追い求めた個性ある絵師たちが集まりました。
有名無名を問わず、集結した作品の中には、神田等謙のように、新たに陽の目を見る作品もあり、今展覧会が、その後のブームの出発点になるかもしれません。
流派を超えて、江戸絵画を横断的に捉えなおす構成
(絵金/伊達競阿国戯場 累)
今までの江戸時代の絵画展では、流派別にまとめられ、各流派からはみ出した画家たちは異端として退けられてきましたが、「奇才 -江戸絵画の冒険者たち-」展では、「既成の殻を打ち破り、自由で斬新な発想をする画家」として注目しています。
特に、江戸、京、大坂以外の諸国で活躍した絵師たちも多く登場します。土佐で活躍した絵金の「血赤」と呼ばれる鮮烈な赤が印象深いです。
モノクロームの若冲
(伊藤若冲/鶏図押絵貼屏風)
2000年に、京博で開かれた「若冲展」で、爆発的な若冲ブームが起き、いまなお衰える気配はありません。
若冲といえば、極彩色の絵がイメージされますが、「奇才 -江戸絵画の冒険者たち-」展で展示されている若冲は、モノクロームの水墨画です。とはいえ、若冲ですから、革新的な新技法によって、水墨表現の可能性を広げました。
写真の「鶏図押絵貼屏風」は、雄鶏の尾羽が印象的で、鶏だけでも十分楽しめます。さすが、若冲だと感心します。
まだまだ、コロナ終息の展望が持てないながらも、徐々に、日常生活をとりもどしつつあります。美術展に行き、好きな絵画を楽しむ普通のことが、どれだけ幸せなことか、身に沁みました。
「奇才 -江戸絵画の冒険者たち-」展が、途中中断することなく、開催されるよう、願わずにはおれません。
[ 取材・撮影・文:atsuko.s / 2020年9月11日 ]
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