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    レポート
    歿後60年 椿貞雄 師・劉生、そして家族とともに
    千葉市美術館 | 千葉県
    劉生の亜流、ではありません
    大正時代から戦後まで活躍した洋画家の椿貞雄(つばきさだお:1896-1957)。岸田劉生に私淑し、強い影響を受けながら創作。劉生の死で苦しんだ時期もありましたが、後に独自の境地に到達しました。椿が後半生を過ごした房総の地で、大規模な回顧展が開催中です。
    (左から)椿貞雄《自画像》1915(大正4)年1月9日 千葉県立美術館 / 岸田劉生《自画像(椿君に贈る自画像)》1914(大正3)年5月8日 東京都現代美術館
    (左から)椿貞雄《風景(道)》1915(大正4)年頃 米沢市上杉博物館 / 椿貞雄《赤土の山》1915(大正4)年11月29日 米沢市上杉博物館
    (左から)椿貞雄《昼寝》1928(昭和3)年5月 船橋市 / 岸田劉生《芝川照吉大人肖像》1922(大正11)年秋 京都国立近代美術館
    (左から)椿貞雄《童子像(男の子の首)》1924(大正13)年1月20日 下関市立美術館 / 椿貞雄《洋装せる菊子立像》1922(大正11)年 米沢市上杉博物館
    (左から)椿貞雄《冬瓜桃葡萄図》1946(昭和21)年(47年加筆) 船橋市(船橋市指定文化財) / 椿貞雄《冬瓜茄子図》1942(昭和17)年 山形美術館
    (左奥から)椿貞雄《蕪にくわい(聖護院大根)》1926(大正15/昭和元)年(30年以降に改作) 米沢市上杉博物館 / 岸田劉生《ギヤマンのある静物》1929(昭和4)年1月 岡山県立美術館 / (右手前)椿貞雄《窓辺早春》1949(昭和24)年 油彩、カンバス 個人蔵
    (左から)椿貞雄《晴子像(少女像)》1943(昭和18)年 米沢市上杉博物館 / 椿貞雄《晴子像》1938(昭和13)年 山形美術館
    (左から)椿貞雄《桜島初雪(雪の桜島)》1956(昭和31)年 船橋市(船橋市指定文化財) / 椿貞雄《桜島》1956(昭和31)年(57年加筆) 米沢市上杉博物館
    (左から)椿貞雄《祖母と孫》1955(昭和30)年頃 米沢市上杉博物館 / 椿貞雄《孫と祖母》1956(昭和31)年頃 船橋市
    山形県米沢市に生まれた椿貞雄。上京後まもなく展覧会で岸田劉生の作品を見て感動し、自作を携えて劉生を訪ねました。その時の作品が、メインビジュアルになっている自画像。劉生も椿の力量を認め、ふたりは強い絆で結ばれる事となります。

    劉生が中心となって結成された草土社の有力メンバーとなった椿。この頃の作品は、劉生が研究していたヨーロッパ古典絵画風の肖像画や、劉生の作品と全く同じ場所を描いた風景画など、共に行動し、劉生からの強い影響を受けていたことを感じさせます。


    第1章「出会い」

    劉生が宋・元時代の絵画や浮世絵など、東洋美術にも関心を示すようになると、椿も追随。東洋の伝統をふまえた上で、油彩による写実で表現する事は、後年に至るまで椿の大きなテーマとなりました。

    ここにはちょっと珍しい展示もあります。劉生が描いた《狗をひく童女》と、それに触発されたような椿の《春夏秋冬図屏風(春)》が並び、さらに劉生が手本にした版本と、その版本のオリジナルである肉筆浮世絵も展示されています。浮世絵→版本→劉生→椿まで、ざっと300年。犬と童女のイメージが受け継がれていきました。

    劉生は38歳で急死。椿は制作もままならないほど落胆しますが、周囲のすすめもあって渡欧。本場の油彩を見た事で、改めて「油彩による東洋の写実」に向き合う意思を固めます。


    第2章「伝統へのまなざしと劉生の死」

    椿の代表的な画題のひとつが、冬瓜。冬瓜は南九州など暖かい地域で育つため、米沢育ちの椿は、劉生に教わるまで冬瓜を知らなかったそうです。

    肺結核と診断された劉生が、戸外での制作を断念して静物画を描くようになると、椿も静物画へ。冬瓜のごろっとした量感と、表面に粉をふいた質感を確実に捉えるため、毎年冬瓜を買い集めては写生を繰り返しました。静物と周囲との関係にも気を配り、その表現には文人画から学んだ手法も取り入れています。

    会場では椿の次女、夏子の作品も展示されています。夏子は芹沢銈介に師事して型絵染を制作、父と同じ国画会に作品を出品しています。


    第3章「静物画の展開」

    最終章には家族を描いた作品など。子どもが一男三女、亡くなるまでに三人の孫にも恵まれた椿は、家族の肖像も数多く描きました。柔らかい肖像の家族の絵からは、周囲に優しく、誰からも愛された椿の人柄が伝わってくるようです。

    昭和に入ると、富士山なども描いた椿。晩年には度々九州に出かけ、長崎や桜島も描きました。1957年に66歳で死去。病院に入院する日の朝、迎えの車が来る前に一気に描いた椿が絶筆となりました。


    第4章「家族とともに」

    岸田劉生との関係から、劉生の周辺作家として紹介される事が多い椿貞雄ですが、油彩にきちんと向き合いながら東洋絵画の伝統表現に挑んでいったのは、椿ならではの個性といえるでしょう。他館への巡回はなく、千葉市美術館だけでの開催です。

    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2017年6月9日 ]



    ■椿貞雄 に関するツイート


     
    会場
    会期
    2017年6月7日(水)~7月30日(日)
    会期終了
    開館時間
    午前10時-午後6時 (入場は午後5時30分まで)
    金曜日・土曜日は午後8時まで (入場は午後7時30分まで)
    休館日
    7月3日(月)
    住所
    千葉県千葉市中央区中央3-10-8
    電話 043-221-2311
    公式サイト http://www.ccma-net.jp/exhibition_end/2017/0607/0607.html
    料金
    一般 1,200円(960円)、大学生 700円(560円)、高校生以下は無料

    ※( )内は前売券、団体20名以上、千葉市内在住65歳以上の方の料金
    ※障害者手帳をお持ちの方とその介護者1名は無料
    展覧会詳細 歿後60年 椿貞雄 師・劉生、そして家族とともに 詳細情報
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