現在では歌川広重の代名詞のようになった東海道五十三次ですが、実は多くの絵師が手掛けた人気のテーマ。広重と同年代の歌川国芳も、やや先輩の歌川国貞(のち三代豊国)も、東海道の宿場を描いた揃物を出しています。
北斎の東海道五十三次は、享和年間(1801-04)から文化(1804-18)中期頃の制作。広重の東海道五十三次の初作は天保4(1834)年頃のため、広重より約30年も前に描いていた事になります。
展覧会は5章構成。最初の展示室が1~2章です。
本展最大の見ものである《春興五十三駄之内》は、2章に登場。錦絵より質が高い摺物ならではの凝った表現に加え、《春興五十三駄之内》の初摺の揃いは他では所蔵が知られていないという貴重な逸品です。
北斎の東海道五十三次は、サイズが小さいことも特徴的。広重は風景を描きましたが、北斎は小さな画面にその土地の風俗を数多く描いています。
1~2章続く3階は3~5章。3章ではシリーズや宿駅にとらわれずに北斎の東海道五十三次を「信仰」「特産品」「土地の暮らし」などテーマ別で展示するユニークな構成です。
本展もうひとつの注目作が《東海道名所一覧》、江戸から京までの東海道の道のりを鳥瞰図で一図におさめた作品です。もちろん、衛星写真も飛行機もドローンも無い時代。北斎ならではの柔軟な発想に溢れています。
会場最後には北斎の弟子が描いた東海道の作品なども。現在のイメージよりも、北斎の東海道作品が指示されていた事も分かります。
3~5章繊細な浮世絵という事もあり、作品は大部分が前後期で展示替え(前期:4月18日~5月14日、後期:5月16日~6月11日)。美しい《春興五十三駄之内》も半分ずつの展示となります。前後期とおしての来館で、コンプリートを目指してください。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2017年4月17日 ]■てくてく東海道 に関するツイート