すでに日常の衣服ではなくなった、日本のきもの。ただ、現在でも冠婚葬祭などの場はもとより、伝統文化への憧れからか、若い人も、きものを好む人が増えたように感じます。
本展では日本文化の象徴として、きものを展覧。前後期あわせて約300件を紹介し、改めてきものが持つ美の世界を振り返ります。
会場
第1章は「モードの誕生」。安土桃山時代から江戸時代にかけて日本を訪れた外国人貿易商人にも絶賛された、きものの美。
重要文化財《縫箔 白練緯地四季草花四替模様》は、全身を4つに区切った「四替(よつがわり)」。安土桃山時代を象徴する流行デザインで、春夏秋冬をあらわしています。
(左前)重要文化財《縫箔 白練緯地四季草花四替模様》安土桃山時代 京都国立博物館[展示期間:6/30~7/26]
第2章は「京モード 江戸モード」。第2代将軍秀忠の娘・和子は後水尾天皇に嫁ぎました。和子は宮中で小袖を着用。「寛文小袖」として注目され、きものの流行は京都から広まる事となります。
重要文化財《振袖 紅紋縮緬地束熨斗模様》は鮮やかな色彩が目を引きます。江戸時代中期における友禅染の最高技術を駆使しています。
(左前)重要文化財《振袖 紅紋縮緬地束熨斗模様》江戸時代 京都・友禅史会蔵[展示期間:6/30~7/26]
第一会場最後には、京都・島原の置屋、輪違屋に伝わった太夫の打掛。豪華な唐織の打掛は、西陣の近くだからこそあつらえる事ができます。輪違屋は現存しており、背景は「傘の間」の写真です。
《太夫打掛・丸帯》明治~大正時代 京都 輪違屋[全期間展示]
第3章は「男の美学」。冒頭には信長、秀吉、家康が着用したきものが。信長は独特のファッションセンス、秀吉はいかにもと思える豪華さ、家康のきものも、ここで展示されているのは「かぶいた」意匠です。
第3章「男の美学」
先に進むと粋な装いが登場。江戸時代に火消しを務めた鳶職は火消半纏の裏地に武者絵を表現し、その勇敢さを誇示しました。男らしい姿は浮世絵でも人気の題材になりました。
第3章「男の美学」
第4章「モダニズムきもの(明治・大正・昭和初期)」から、一気に会場は華やかになります。開国後、西欧から新しい文化が流入。服飾も男性は洋装化が進みますが、女性は第二次世界大戦前まではきものが一般的。きものの模様にも、ヨーロッパのモードが取り入れられます。
第4章「モダニズムきもの(明治・大正・昭和初期)」
《振袖 淡紅綸子地宮殿模様》はベルサイユ風といえるデザイン。窓は装飾的な鉄枠、上部にシャンデリア、窓の下にも派手な意匠があしらわれています。戦後の復興期のきものです。
《振袖 淡紅綸子地宮殿模様》昭和時代 千葉・国立歴史民俗博物館[全期間展示]
第5章は「KIMONOの現在」。現代における「きもの」の多様な展開が紹介されています。
眼を奪われるのが、並んだきものに風景模様が描かれた久保田一竹の作品。独自のインスタレーションです。
久保田一竹《連作 光響》昭和58~平成元年 イギリス 国際ショディエフ財団
会場最後は、X JAPANのリーダー、YOSHIKIさんが展開する着物ブランド「ヨシキモノ(YOSHIKIMONO)」。YOSHIKIさんは呉服屋の長男として生まれ育ちました。
「YOSHIKIMONO」
きもの自体が華やかという事もありますが、会場全体がとても明るく楽しい雰囲気。コロナ鬱を吹き飛ばすような、わくわくする展覧会でした。
ここでは触れませんでしたが、きものを描いた美術品も数多く出展されており、きものと見比べる楽しさもあります。なお混雑緩和のため、チケットはオンラインによる事前予約制(日時指定券)となります。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2020年6月29日 ]
※会期の前後期で作品が入れ替わります