ルーヴル美術館と漫画。やや意外に思える組み合わせですが、日本にマンガ、米国にコミック(アメコミ)があるように、フランス語圏はバンド・デシネ(BD)という漫画文化が発達しており、日本とは異なる形態ではありますが、独自の表現芸術として確立しています。
2005年から始まった「ルーブル美術館BDプロジェクト」では、漫画でルーヴル美術館を表現した作品が発表されており(現在も継続中)、今回は描き下ろしも加えて16人の作品を紹介。日本人が7人、他が9人という構成です。
展覧会はオープニング映像の後、漫画につつまれた「サモトラケのニケ」(レプリカ)が出迎える第1章から。ここではルーヴル美術館の表の顔に焦点を当てた5作品が紹介されています。フランスを中心にヨーロッパで評価が高い日本の谷口ジローは、この章です。
第1章「The Great LOUVRE ~偉大なるルーヴル美術館~」第2章は「Welcome to a Parallel World ~ようこそ、異次元の世界へ~」。どこかに存在するかもしれない異次元のストーリーで描く作品、6点です。
展覧会の見どころのひとつが、凝った会場構成。順路を進むにつれて異なった空間があらわれ、作品の世界観をドラマチックに演出します。
カルト的な人気を誇る荒木飛呂彦は、この章。ルーヴル美術館所蔵のミケランジェロ《瀕死の奴隷》と、荒木が描いたキャラクターを対比させた展示はユニークです。
第2章「Welcome to a Parallel World ~ようこそ、異次元の世界へ~」最後はルーヴル美術館と名作の普遍性に焦点をあてた第3章。坂本眞一はモナリザ、五十嵐大介はサモトラケのニケをテーマにしています。
各章の間では、ルーヴル美術館の名作や、マンガとBDの違いを紹介するコーナーも。「フランスでの漫画の売り上げの3割は日本のマンガ」されるほど日本のマンガが受け入れられているフランスですが、マンガとBDは紙の質・製作スピード・売られている場所までかなりの差異がある事も説明されています。
第3章「Beyond time and space ~時空を超えて~」電車の中で読む人が多いように、一般的に漫画はかなり早いスピードで読まれます。時間をかけて鑑賞する美術展とは対極ともいえますが、今回展示されているのは美術館で鑑賞するに相応しい作品ばかりです。建築、彫刻、絵画、音楽、文学(詩)、演劇、映画、メディア芸術(諸説あり)に次ぐ「9番目の芸術」である漫画を、じっくりとお楽しみください。
東京展は9月25日(日)まで。次いで大阪・福岡・名古屋に巡回します。
会場と会期はこちらをご覧ください。[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2016年7月21日 ]■ルーヴルNO.9 に関するツイート