展覧会のタイトルの「歌仙兼定」は肥後藩2代藩主細川忠興の愛刀。昨年から若い女性を中心に流行しているオンラインゲーム「刀剣乱舞-ONLINE-」に登場する一振りです。
指定文化財ではない刀の名を冠する展覧会は極めて異例ですが、館長細川護熙さんの発案でこのタイトルに決まりました。
歌仙の名は忠興が家臣36人をこの刀で手打ちにしたという伝承から、三十六歌仙にちなんで名づけられました。短気であり、当代きっての風流人、という忠興のエピソードをよくあらわした命名ですが、36人を手打ちにしたというのはあくまで伝承。明確な資料は存在していません。
他にも国宝の太刀生駒光忠など、細川家に伝わる名刀が一堂に会します。
刀剣はその刃紋の美しさこそ鑑賞の肝。刃の向きなどの展示の通例に囚われず、最も美しく鑑賞できる向きで展示されています。
《刀 銘 濃州関住兼定作(歌仙兼定)》室町時代(16世紀)、《歌仙拵》江戸時代(17世紀)利休七哲の一人だった忠興、その父幽斎も天下にその名を知られる超一流の文化人でした。
和歌の規範である「古今和歌集」の解釈の秘伝を相承する「古今伝授」。公家の三条西家に古今伝授を相伝するため、中継ぎをしたのは幽斎でした。関ヶ原の戦いで幽斎の居城が攻められた際、その秘伝が途絶えることを危惧した朝廷から、講和の勅命が下りました。その講和の記念に送られた《太刀 銘 豊後国行平作》は、現在国宝に指定され、3階の展示室最奥の展示ケースで見ることができます。
幽斎と古今伝授 会場風景刀を彩る刀装具も、刀剣鑑賞の楽しみのひとつです。名刀・歌仙兼定は黒字に白の細かな斑点を散らした拵が特徴的で、肥後拵の規範となりました。
風流好みの忠興は多くの金工師を集めて指導し、肥後は刀装具の特産地として栄えます。鉄の細かな細工物が肥後鐔の特徴。細川家の九曜紋をモチーフにした鐔など、ぐっと近付いてご覧ください。
刀装具の世界 ─肥後金工と細川家─ 会場風景展覧会は刀剣女子を中心に大好評。文京区のタイアップでスタンプラリーも開催中です。ゲームや大河ドラマなど、興味の入り口は様々ですが、本物を見ればさらに楽しめること間違いなしです。
[ 取材・撮影・文:川田千沙 / 2016年7月8日 ]■歌仙兼定登場 に関するツイート