洗練された作品で、日本のサブカルチャー全体に大きな影響を与えたと評される江口寿史さん。本展は江口さんの画業を集大成した画集「KING OF POP 江口寿史 全イラストレーション集」(玄光社)の刊行を記念した企画です。
北九州市漫画ミュージアムから巡回し、首都圏では川崎市市民ミュージアムでの開催。エントランスや会場入口では撮影可のコーナーもあり、会場は内外ともに江口寿史ワールドに溢れています。
エントランスから
展示室は大きく「イラストレーション」と「マンガ」の2コーナー、まずはイラストからです。
江口さんのイラストといえば、やはり女の子。瞬間的な表情や、ちょっとした仕草から、女の子が最も輝いて見えるポイントを切り取るように描く手腕は、江口さんならではといえます。
特徴的なのは、徹底的に整理された描線。余計なものを省く事で、イラスト全体の透明感が際立ちます。貴重なスケッチ類も展示されていますので、創作の過程もお楽しみください。
「イラストレーション」
江口さんのマンガ家デビューは1977年。初の連載作品となった同年の「すすめ!! パイレーツ」は、それまでのギャグマンガには見られなかった軽快なテンポとポップな画風で大ヒットしました。熱血は忌避され、“軽薄短小”へのシフトが進んだ時代の空気をつかみました。
「ストップ!! ひばりくん!」は1981年から連載。この頃のジャンプは「Dr.スランプ」「キャッツアイ」「キャプテン翼」などが割拠する充実時代でしたが、都会的なセンスにあふれる江口さんの作風は、魅力的なヒロイン(本当は美少女に見える男の子)の存在感とともに強く支持されました。
会場には両作はもちろん、デビュー作「恐るべき子どもたち」、「なんとかなるでショ!」などのショートギャグ、近作まで約100点の原画が展示されています。
「マンガ」
江口さんが日ごろから実践しているのが「5分スケッチ」。「“これは”と思う写真を、下書きなしで5分以内にスケッチする」がルールで、江口さんのツイッターでも紹介されて反響を呼びました。
「5分スケッチ」は、江口さんの個展でも来場者をモデルに行われています。会場には今まで描かれたライブスケッチ(複製)とともに、作画の様子も上映。気さくなトークを交えながら、あっという間に完成するさまは、まるで魔法のようです。
「5分スケッチ」
来場者を描く「5分スケッチ」は、本展でも1月16日(土)と1月24日(日)に行われます。描かれる人は、当日の来場者から抽選で選定。詳しくは公式サイトでご確認ください。[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2015年12月4日 ]
※1月5日から、一部の作品が展示替えされています。
■江口寿史展 に関するツイート