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    レポート
    金銀の系譜 ~宗達・光琳・抱一をめぐる美の世界~
    静嘉堂文庫美術館 | 東京都
    蘇った逸品+館が誇る至宝
    1年半に及ぶ休館を経てリニューアルオープンした静嘉堂文庫美術館。再開後初の展覧会は、金銀を多用した豪華な作品を紹介する企画です。2015年11月25日(水)からは後期展示に入りました。
    国宝 俵屋宗達《源氏物語関屋・澪標図屏風》
    伝尾形光琳《鶴鹿図屏風》
    本阿弥光悦《草木摺絵新古今和歌巻》
    (奥左から)「伊年」印《四季草花図屏風》(左隻) / 松花堂昭乗《勅撰集和歌屏風》
    (右手前)重要文化財 野々村仁清《色絵法螺貝香炉》
    酒井抱一《波図屏風》
    (左手前)重要文化財 尾形光琳《住之江蒔絵硯箱》
    (左奥から)鈴木其一《雨中桜花紅楓図》 / 渡辺南岳《玄宗貴妃壱笛双弄図》 / 谷文晁《青緑山水図》 / 重要美術品 酒井抱一《麦穂菜花図》
    (手前)国宝《曜変天目(稲葉天目)》
    「描かれた風景 ~絵の中を旅する~」展の後、長い休みに入っていた静嘉堂文庫美術館。リスタートは「金銀」をテーマに、宗達・光琳・抱一と受け継がれた琳派の系譜を中心に紹介する企画です。

    本展では修理されていた逸品2点のお披露目が注目。ひとつ目は俵屋宗達による国宝《源氏物語関屋・澪標図屏風》です。

    宗達の国宝3点のうちのひとつで(他は《風神雷神図》と《蓮池水禽図》)、右隻が関屋、左隻が澪標。ともに源氏がかつて縁を結んだ女性と偶然再会する場面ですが、源氏をはじめ主要人物は描かれていません。

    近年の研究で1631年で京都・醍醐寺三宝院に納められた事が指摘されたたため、不明な点が多い宗達の基準作としても注目されています。

    以前は絵具の剥落、画面の亀裂など傷みが目立っていましたが、3年かけて慎重に修理。約400年前の作品は、こうして次代に引き継がれていきます。


    展示室の奥が、国宝 俵屋宗達《源氏物語関屋・澪標図屏風》

    修理後初お披露目のもうひとつは、尾形光琳による重要文化財《住之江蒔絵硯箱》。光琳が私淑する本阿弥光悦の硯箱を模して作ったもので、こちらは後期から展示がはじまりました。手本になったのは、東京国立博物館が所蔵する国宝《舟橋蒔絵硯箱》と推測されています。

    波間は美しい金蒔絵。文字は銀板、黒い岩は鉛板です。修理では劣化した鉛の錆を落とすと同時に、腐食防止の処理が行われました。

    ちなみに処理も現代の薬品を用いるのではなく、「煙硝三分、硫黄三分、胆礬二分、塩少、酢ニテ」という光琳関係資料「小西家文書」の記載に準じて行われています。


    重要文化財 尾形光琳《住之江蒔絵硯箱》

    宗達から光琳へと伝わった琳派の系譜を受け継いだのが、酒井抱一です。抱一は光琳の百回忌の法要を行うとともに、光琳の作品をまとめた「光琳百図」を出版。「光琳百図」が海外に渡った事で、光琳の受容は世界的に広まりました。

    目立つ銀地の屏風は、抱一による《波図屏風》。光琳の《波濤図屏風》(メトロポリタン美術館蔵)から着想したと思われ、金地に描いた光琳に対し、抱一は月光をイメージした銀地に、ダイナミックな波を表現しました。

    会場には、抱一の自筆句稿である《軽挙館句藻》も展示されており、光琳の後継者である事を意識した句などが記されています。


    酒井抱一の作品

    リニューアルを記念した展覧会という事もあって、静嘉堂文庫美術館が誇る至宝、国宝《曜変天目(稲葉天目)》もお目見えしています。

    いつもは展示室内で出る事が多い曜変天目ですが、今回はラウンジでの展示。静嘉堂文庫美術館のラウンジは眺望が良いため、空気が澄んでいるこの時期は、眼前に瑠璃色の曜変天目、遠景に雪化粧の富士山という、超贅沢なひとときを楽しめるかもしれません。天気が良い日の午前中が狙い目です。

    また自然光で見る曜変天目は、いつもと違う表情を見せます。展示照明の下では青味が強く感じられますが、西日に照らされるとピンク色の輝きも見えるとの事。こちらを狙うなら、午後の来館がお勧めです。


    国宝《曜変天目(稲葉天目)》も展示

    本展の後は、15年ぶりの多数公開となる煎茶器と、茶道具をあわせて展示する「茶の湯の美、煎茶の美」(1/23~3/21)、運慶作と推測される《木造十二神将立像》のうち修理を追えた4駆を披露する「よみがえる仏の美~修理完成披露によせて~」(4/23~6/5)と、注目展が続く静嘉堂文庫美術館。随時このコーナーでもご紹介したいと思います。
    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2015年11月27日 ]

    TOKYO美術館2015-2016TOKYO美術館2015-2016

     

    エイ出版社
    ¥ 999

     
    会場
    会期
    2015年10月31日(土)~12月23日(水・祝)
    会期終了
    開館時間
    10:00-17:00(金曜日は10:00-18:00)※入館は閉館の30分前まで。
    休館日
    毎週月曜日(祝日の場合は開館し翌火曜日休館)。
    住所
    東京都世田谷区岡本2-23-1
    電話 03-5777-8600(ハローダイヤル)
    公式サイト http://www.seikado.or.jp/
    料金
    一般1,000円 大高生700円 中学生以下無料
    (一般・大高生は20名以上団体割引あり)
    展覧会詳細 「金銀の系譜 ~宗達・光琳・抱一をめぐる美の世界~ 」 詳細情報
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