東京国立博物館で「日本国宝展」が開催されるのは、今回で4回目。これまでの1960年、1990年、2000年の3回は、それぞれ「文化財保護法」施行10年、40年、50年の記念事業として行われましたが、今回は「祈り、信じる力」をテーマに、濃密な信仰から結実した、日本文化の到達点を展観します。
会場文字通り、会場には国宝が溢れるばかり。「全てが目玉展示」としか言いようがありませんが、あえて点数を絞ってご紹介いたしましょう。
まず仏画からは、国宝《普賢菩薩像》。
東京国立博物館が誇る至宝の一つです。数多い普賢菩薩像の中でも最高傑作と称され、平安仏画の中でも屈指の名品として知られます。近くで見ると衣には截金(きりかね:細い線状の金属箔)文様がはっきりと残り、800年以上前の繊細な表現に目を奪われます。
仏画が並ぶ、第1章「仏を信じる」高さ5.5mという巨大な国宝は、《元興寺極楽坊五重小塔》。ただ、こちらは美術工芸品ではなく建造物として国宝に指定されているので、建造物の国宝としては最も小さな部類ともいえます。
基壇から上まで心柱が通っており、古い多重塔と同様の構造。平安・鎌倉・江戸・昭和と何度か修理されていますが基本は奈良時代の制作で、当時各地に建立されていた諸寺の塔の雛形として使われた、という説が有力です。
奈良・元興寺の本堂内部に、床板と天井を抜いた状態で安置されていました(現在は収蔵庫で管理されています)。
国宝《元興寺極楽坊五重小塔》展覧会メインビジュアルの手をあわせる童子は、国宝《善財童子立像》。隣の国宝《仏陀波利立像》とともに、安倍文殊院(奈良県桜井市)の本尊である《文殊菩薩および眷属(けんぞく)》のひとつで、2013年に国宝に指定。彫刻分野では最も新しい国宝です。
獅子に乗る文殊菩薩が、四人の侍者を従えて海を渡る「渡海文殊」の場面を表したもの。快慶がつくったことを記す銘文があります。善財童子立像には彩色の跡が残り、当時の面影がしのばれます。
国法《文殊菩薩および眷属》快慶作 のうち、順に《仏陀波利立像》、《善財童子立像》絵画を中心に、会期中に展示替えされるものが多いので要注意(
出品作品リストはこちら)。前期は10月15日(水)~11月9日(日)、後期は11月11日(火)~12月7日(日)ですが、11月3日(月)までは、東大寺大仏に捧げられた品々である正倉院宝物から11点が特別出品。11月21日(金)~12月7日(日)までは国宝土偶5件がそろい踏み、金印は11月18日(火)~11月30日(日)の12日間限定と、いつ見に行くか迷ってしまいます。
東京国立博物館 平成館だけでの開催。本展の後、平成館は2015年6月までリニューアル休館となります(2階 特別展示室は4月下旬オープン予定)。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2014年10月14日 ]■日本国宝展 に関するツイート