← 前のページへ平成知新館全体で紹介される本展。展覧会の位置づけは平常展(常設展示)となりますが、特別展でもここまで豪華なラインナップはなかなかお目にかかれません。
会場はどの展示室からでも見る事ができますが、エレベーターで3階に上ってから順に降りるのがおすすめとの事。ここでも3階からご紹介します。
3階の展示室は陶磁と考古の2つ。考古には、在銘の経筒(経典を土中に埋納する際に用いる容器)としては日本最古の、国宝《金銅藤原道長経筒》が単独ケースで展示されています。寛弘4(1007)年に藤原道長が埋納したもの。煌びやかな金色が残る筒の外側に、「寛弘四年」の文字がはっきりと見て取れます。
展示室3F-2「考古」から、国宝《金銅藤原道長経筒》金峯神社奥の階段から2階に降りると、右側が特別展示室。10月13日までの第1期は「肖像画」が紹介されます(10月15日からは「桃山 秀吉とその周辺」)。
我が国の肖像画は、平安時代までは礼拝の対象としての高僧像でしたが、鎌倉時代には実在する人物を描いた「似絵(にせえ)」が登場。細い淡墨線を重ねて目鼻だちを整える手法で堂々とした俗人像が描かれました。日本肖像画の最高傑作として名高い国宝《伝源頼朝像》は、その頂点に位置づけられる傑作です。
2階には特別展示室のほか、仏画、中世絵画、近世絵画、中国絵画と5つの展示室があります。
展示室2F-1「特別展示室・肖像画(1期)」から、国宝《伝源頼朝像》神護寺1階に下りて、一番大きな展示室「1F-1」には彫刻が。吹き抜け空間に大阪・天野山金剛寺の本尊である重要文化財《大日如来坐像》をはじめとした巨大な仏像が並ぶさまは圧巻です。
展覧会ビジュアルとしても使われている、割れた顔の中から別の顔が見える仏像は、重要文化財《宝誌和尚(ほうしわじょう)立像》。像高は159cm、間近に見ると畏怖の念を抱くほどの迫力です。宝誌和尚は中国・南北朝時代に実在した僧侶で、武帝が絵師に顔を描かせようとすると、顔が割れて中の菩薩が次々に変化したため顔を描けなかったと言われています。
展示室1F-1「彫刻」から、重要文化財《宝誌和尚立像》西往寺1階には彫刻のほかに絵巻、書跡、染織、金工、漆工と計6室。最後は金工の展示室から国宝《松椿蒔絵手箱》をご紹介しましょう。
天皇、上皇、室町将軍(足利義満)らによって熊野速玉大社(和歌山県)に奉納された手箱13合のうちの1合。中には白粉(おしろい)箱、歯黒筆、櫛箱などの化粧道具が収められています。
外面は詰梨地(つめなしじ・梨地粉を隙間なく蒔いたもの)、金高蒔絵(きんたかまきえ:地盛りをした上に金蒔絵を施す事で、盛り上がった文様になる)など、高度な技術を駆使。極めて豪華な装飾が施されています。
展示室1F-6「漆工」から、国宝《松椿蒔絵手箱》13の展示室で多くの国宝や重要文化財がなにげなく展示されていますが、それぞれが一般的な企画展なら十分に展覧会の目玉になるものばかり。10月15日からの第2期には展示内容が大きく変わりますので、
公式サイトでご確認のうえお出かけください。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2014年9月10日 ]