多彩なコレクションを誇る
根津美術館。明清時代の中国工芸も約700点を所蔵しており、本展ではうち80点を紹介します。
会場は大きく3つのゾーンで構成されています。まず「モノクロームからポリクロームへ-漆工芸の明清時代-」と題し、漆工芸品のご紹介からです。
明時代の初期には、官営工房で堆朱(ついしゅ)が数多く作られました。堆朱は漆の厚い層を作り、文様を彫刻する技法。展覧会のフライヤーで目立つ真っ赤なお盆《堆朱牡丹文盆》も堆朱の作品です。当時の中国では赤がナショナルカラー(国の色)ということもあり、赤い器物は珍重されました。
明後期になると、赤一色から多色展開=ポリクロームに。朱・黒・黄・緑の色漆を重ね、彫る深さでそれぞれの色の面が現れる「彫彩漆」など、高度な技術によってさまざまな作品が生み出されていきました。
「モノクロームからポリクロームへ-漆工芸の明清時代-」続いて「染付から五彩へ-明時代の陶磁器-」です。
明時代以降の中国陶磁の歴史は、江西省の景徳鎮窯が中心です。初期には、ここに宮廷のための磁器をつくる「官窯」がおかれました。
白地に青い文様を表した青花(せいか)磁器が隆盛を極めた後、15世紀後半には赤、黒、緑、黄などの釉薬を用いた、まさに「カラフル」なうつわも誕生します。
中国にとって陶磁器は、重要な輸出品でもありました。日本にも茶道具など多くの陶磁器が輸出されており、会場には愛らしい型物香合も並びます。
「染付から五彩へ-明時代の陶磁器-」そして最後が「粉彩と単色釉-清時代の陶磁器-」。17世紀から18世紀以降、陶磁器の技術は極めて高度なレベルに到達します。
七宝の技術を応用した粉彩(ふんさい)により、柔らかな中間色や濃淡も表現できるようになり、絵画のような絵付けも可能になりました。
一方で、色釉の開発も進み、鮮やかな発色の陶磁器も誕生。発色の妙を競いました。
「粉彩と単色釉-清時代の陶磁器-」本展では、展示室2と5で「明清の絵画」も開催。同じ時代の絵画作品も楽しめます。
展示室2では大画面の掛幅、展示室5では画巻と画冊が紹介されています。
同時開催の「明清の絵画」[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2014年5月30日 ]