大阪のあべのハルカス美術館で、「カラヴァッジョ展」が開催されています。
カラヴァッジョは1571年、イタリアのミラノ生まれ。13才で画家を志し、ローマやナポリなどで活動しました。
この展覧会では、カラヴァッジョと、その影響を受けた同時代の画家たちの作品が3章にわたって紹介されています。
Ⅰ 1600年前後のローマにおけるカラヴァッジョと同時代の画家たち
ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ 《リュート弾き》 1596~97年頃 個人蔵
楽器をかかえ、こちらを見つめる若い女性。…かと思いましたが、モデルは少年なのだそうです。
カラヴァッジョがローマに出てきて才能を認められ、人気が高まりつつあった時代の作品《リュート弾き》です。
リュートはどんな音かなと思っていましたが、絵の前に実物の楽器も展示されていて、音を再生して聞くことができます。
流れてくるのは、絵のなかの楽譜に描きこまれた歌曲。心が穏やかになるような音色です。
カラヴァッジョと同時代の画家による模写も展示されています。
17世紀前半の不詳画家《聖トマスの不信》(カラヴァッジョ作品からの模写)1610~66年頃 ウフィツィ美術館蔵
キリストの復活を信じられない弟子を、キリストがさとす場面です。
弟子が指を突っ込んでいるのは、キリストが十字架上で死を迎えた後、兵士の槍でつかれたときの傷。弟子たちの表情が真に迫っています。
リアリティを感じさせる表現は当時の人々を驚かせ、40点近くもの模写が制作されました。
これはその中の一枚です。
Ⅱ カラヴァッジョと17世紀のナポリ画壇
ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ《法悦のマグダラのマリア》1606年 個人蔵
血の気の引いた唇に、焦点の合わない目。
「一体、どんな衝撃的な出来事があったのか」と思いましたが、絵のタイトルにある“法悦”とは宗教的な恍惚感を表す言葉で、過去を悔いたマリアが神の赦しを得た場面を描いたものだそうです。
マリアという名の女性は聖書の中に何人か登場しますが、ここに描かれているのは、キリストの弟子となり、その死と復活の場面にも立ち会った女性。
見た瞬間に、目に焼き付くような一枚です。
ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ《歯を抜く人》1608~10年頃 ウフィツィ美術館群パラティーナ美術館蔵 ©Gabinetto fotografico Gallerie degli Uffizi
麻酔のない時代に、ペンチで歯を抜かれる人。
想像すらしたくない痛みですが、好奇の目をかくそうともせず見物するまわりの人々の表情も、容赦がありません。
Ⅲ カラヴァッジョ様式の拡がり
カラヴァッジョは画業で名声を得る一方、2週間仕事すると、1、2か月は剣を脇に下げ遊びまわり、行く先々でケンカや暴力沙汰を起こしていました。
ついには殺人を犯し、ローマから逃亡。先に紹介した《法悦のマグダラのマリア》と《歯を抜く人》、次に紹介する《洗礼者聖ヨハネ》は、逃亡生活のなかで描かれたものです。
ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ《洗礼者聖ヨハネ》1609~10年 ボルゲーゼ美術館蔵
描かれているのは、洗礼者聖ヨハネ。キリストに洗礼の儀式を行った人物です。
カラヴァッジョが恩赦を求めて死の直前まで携えていた3枚の絵のうちの一枚で、ヨハネのどこか憂いを帯びた表情には、逃亡生活に倦んだカラヴァッジョ自身の心情が表れているようにも見えます。
圧倒的な実在感をもって人物像を描き、美術史の流れを変えたと言われるカラヴァッジョの世界。ずっしりとした余韻が残ります。
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tomokoy
京阪神を中心に、気になる展示をぷらぷら見に出かけています。
「こんな見方も有りか」という感じでご覧いただければと思います。
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