滋賀県のMIHO MUSEUMで「The 備前 ―土と炎から生まれる造形美―」が開催されています。
岡山県備前市の伊部(いんべ)地域を中心に生産されている備前焼。
時代順に3つの章で紹介されています。
「Ⅰ章 源流としての備前焼」では、桃山時代から江戸時代にかけての作品が並びます。
まずは、ひょうたん型の徳利がお出迎え。
瓢形徳利(ひさごがたとくり) 銘 くくり猿 桃山時代 MIHO MUSEUM
ぐにゃりと首をかしげた徳利。胴の下の部分にもくぼみがあり、手に持ったとき、親指と人差し指がちょうどおさまる形になっています。
「備前徳利、お酒がうまい」という言い回しが昔からあるそうで、実際にお酒を注いでみたくなります。
下の作品も、ひょうたん型です。
備前瓢形茶入(びぜんひさごがたちゃいれ)桃山時代 MIHO MUSEUM
お茶の葉を入れる器です。
表面が釉薬(うわぐすり)に覆われておらず、絵付けもなく、土の表情が出る備前焼。
桃山時代、茶をたしなむ人々に愛好され、多くの器がつくられました。
ちなみに赤い色は、原料となる土に鉄分が多く含まれていることと関係があるそうです。
下も、茶席で使われた器です。
耳付花入(みみつきはないれ) 銘 シバノ戸 桃山時代
どっしりとした花入(はないれ)。
「備前の花入、花が長持ち」という言い回しもあり、花の持ちのよさや、水の腐りにくさが経験的に知られているようです。
陶板 桃山時代 人間国宝美術館
直径50~60cmくらいの分厚い陶製の板です。
大きな甕(かめ)などを焼くとき、甕にフタをするようにこの板を置き、さらにその上に小さな器をのせて、たくさんの器を一度に焼きました。
丸い模様のように見えるのは、上にのせていた器のあとです。
人に見せることを前提にしていない分、土のむき出しのエネルギーを感じます。
「Ⅱ章 近代の陶芸家と備前焼」では、昭和から平成にかけて活躍した6名の陶芸家による作品が紹介されています。
伊勢﨑満 緋襷荒土大壺(ひだすきあらつちおおつぼ)(1970年)
あざやかな緋色が目を引く壺。
少し大きな砂粒のようなものが混じった肌合いです。
備前焼の原料となる土は、主に田んぼの下から採られています。
きめの細かい粘土ですが、ここでは山の粗い土を混ぜ入れているそうです。
「Ⅲ章 現代の備前焼」では、現在活躍中の9名の作家による作品が紹介されています。
作家の一人、森陶岳(もり とうがく)氏による作品です。
下の写真も森氏の作品の一つです。
森 陶岳 砂壺 (1970年)東京国立近代美術館
火山の岩が壺に姿を変えたかのような風合い。
河川工事で出てきた土を混ぜて使っているそうです。
島村 光 群雀(むれすずめ) (2002年)
チュンチュンと可愛い声が聞こえてきそう。なんとなく、おいしそうでもあります。
こうした陶芸の展示を見ると、つい作品に触りたくなります。
そう思うのは陶芸家も同じ、というよりそれ以上の思いがあるようで、土や陶器に触れたくなるのは「人類の郷愁」という、ある陶芸家の言葉が紹介されていて印象的でした。
「人も土から生まれ、いずれ土に還る存在だから」と。
最初から最後まで「The 土」とでも呼びたくなるような備前焼の世界。
MIHO MUSEUMのあと、兵庫、岡山、愛知を巡回します。
エリアレポーターのご紹介
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tomokoy
京阪神を中心に、気になる展示をぷらぷら見に出かけています。
「こんな見方も有りか」という感じでご覧いただければと思います。
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