「世界を変える美しい本 インド・タラブックスの挑戦」が、京都の細見美術館で開催されています。
タラブックスは、南インドのチェンナイにある出版社です。1994年に設立され、アートに関する本や、子ども向けの絵本などを出版してきました。
なかでも特徴的なのは、手すきの紙に、印刷や製本も手仕事で行うハンドメイドの本。
そんなタラブックスの本づくりを紹介する展覧会です。
会場は3つの展示室にわかれています。
最初の展示室に入ってみます。
『世界のはじまり』 Creation/2014 より
なんとなく面白い雰囲気の絵です。絵のタイトルは “地中の作り手”。
大地や水の起源、生命にまつわる、インドの先住民族の言い伝えが描かれた絵本のなかの一枚です。
その絵本『世界のはじまり』を手にしているのは、タラブックスの代表者のひとり、ギータ・ウォルフさんです。
文学を学び、「好きな本を出版しよう」と、友人たちとタラブックスを立ち上げました。 “タラ” は、サンスクリット語で「星」を表します。
タラブックスの代表作となったのが、下の作品です。
『夜の木』 The Night Life of Trees/2011
『夜の木』という絵本です。
ゴンド族という、インド中央部の先住民族とともにつくられた作品で、原画もゴンド族のアーティストが描いています。
コットンの古布からつくられた紙に、シルクスクリーンという版画の手法で印刷されていて、『夜の木』というタイトルにふさわしく、どっしりとした重みを感じさせます。
次の展示室に入ってみます。
『1 2 3 インドのかずのえほん』One, Two, Tree! /2003 より
こちらは、インドの数の絵本です。
日本ではみかけない動物が、1、2、3、4… 8頭います。
何の動物かというと、なんとハイエナなのだそうです。
本づくりのパートナーは、インドのアーティストだけではありません。
『アンティゴネー』Antigone /2001
こちらはギリシャ悲劇の『アンティゴネー』。アメリカのゲティ美術館とのコラボレーションです。
特注の手すき紙にシルクスクリーン印刷されています。
これは何の本でしょう?
『理想の少年 インドの教育ポスター』An Ideal Boy -Charts from India/ 2001
不思議な雰囲気の少年少女。
「よい子」を示す図など、インドの視覚教材を集めた本だそうです。
教育、文学や美術書から社会問題を扱ったものまで、タラブックスが取り上げるテーマは多彩です。
最後の展示室に入ってみます。
『母なる神の布』The Cloth of the Mother Goddess / 2015
こちらは布でつくられた本。描かれているのは、女神です。観音開きになっていて、祭壇のように見えます。
インドでは、階級制度により寺院に参拝することを禁じられている人々が、女神を木版で刷った布を祭壇代わりに使うそうです。
本の美しさやテーマの面白さもさることながら、少数民族や職人など、弱い立場に置かれがちな人々と、対等な人間同士として向かい合い、本をつくりあげていくプロセスが印象的でした。
木がゆっくりと生長して、実をつけることに似ている気がします。
「つくり手にとって公正であり、読者にとって良いものであること。そのバランスを保ちたい」というギータさん。
タラブックスの本が多くの人を惹きつけ、支持を集めている理由の一つだと感じます。
細見美術館での展示は8月18日(日)まで。このあと、福岡に巡回します。
エリアレポーターのご紹介
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tomokoy
京阪神を中心に、気になる展示をぷらぷら見に出かけています。
「こんな見方も有りか」という感じでご覧いただければと思います。
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