大阪・天王寺のあべのハルカス美術館で開催されている「ミラクル エッシャー展」。
エッシャーと聞いてまずイメージするのは、やはりこのチラシにあるような、まか不思議な世界です。
理屈抜きで楽しめそう、と足を運びました。
展示は8つのキーワードを切り口に展開されています。
最初のキーワードは『科学』。エッシャーの作品の、どのあたりが科学なのでしょうか。
《貝》 妙な存在感があります。
科学というと、何となく理科の実験のようなものを連想しますが、エッシャーが関心をもっていたのは幾何学、そして結晶学というもの。
自分は「結晶学というものがこの世にあるのか(知らなかった…)」という人間ですが、その道の人にとっては、たまらない展示なのではないかと思います。
次のキーワードは『聖書』。天地創造など、聖書にちなんだ作品が並びます。
《バベルの塔》 イスラエル博物館の学芸員の方が解説中。
エッシャーは、建築装飾美術学校で学んでいたそう。なるほど、描かれた構造物の揺るぎなさに納得です。
『風景』。
イタリアのアマルフィ海岸など、急勾配の土地を描いた風景作品が並びます。
エッシャー自身はオランダ生まれのオランダ育ちですが、イタリアの風景に魅せられて、結婚を機に10年ほど住んでいたとのこと。縁の深い土地だったようです。
『人物』。
なかなか味のある作品が並んでいます。こちらは若かりし日の自画像。
《椅子に座っている自画像》 1920年 All M.C. Escher works © The M.C. Escher Company, The Netherlands. All rights reserved. www.mcescher.com
『広告』。
くっきりと迷いのない線が見ていて心地よく、それでいて手仕事の温かみを感じます。
商業デザイン以外に、エッシャーがわが子の誕生を知らせるグリーティングカードも。とても愛らしいです。
『技法』。
ここで目を奪われたのは≪扁形動物≫という作品。
扁形(へんけい)動物とは、その名の通り体の平たい生物ですが、彼らが画面の四方から現れ、どこが始まりとも終わりともわからない空間を漂う様子を確認できます。
《扁形動物》 写真の右端の作品。
エッシャーはさまざまな技法に熟達し、例えばリトグラフをメゾチントに見せかける、などの技巧をこらしていたそう。
門外漢にはその価値がわからず、扁形動物に目が奪われていましたが…。
版画をよく知る人なら、感動するようなテクニックなのでしょう。
次の『反射』。鏡をモチーフにした作品が並びます。
最後の『錯視』では「これぞエッシャー」と叫びたくなる作品が目白押し。もはや言葉は必要ないと思えます。
《描く手》
《滝》 脳が心地よく裏切られ続けます。
《メタモルフォーゼⅡ》では、は虫類がいつのまにか正六角形になり、蜂の巣になり、蜂の間から魚が現れ…。その変化の鮮やかさに言葉を失います。
《メタモルフォーゼⅡ》(部分)
エッシャーの世界の底知れなさに触れた2時間(か、それ以上)。
見る人が自らその世界に参加せずにはいられない。謎解きしたくてたまらなくなる…
エッシャーの魅力はそこに尽きるなぁ…。そんなことを感じた一日でした。
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tomokoy
京阪神を中心に、気になる展示をぷらぷら見に出かけています。
「こんな見方も有りか」という感じでご覧いただければと思います。
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