一人のコレクターがその大部分を作った
山口県立萩美術館・浦上記念館の所蔵品の中から、東洋陶磁130点と浮世絵62点、計192点を紹介する本展。会場は
根津美術館です。
展示室1で中国陶磁、隣の展示室2で朝鮮陶磁、2階の展示室5で浮世絵を紹介していきます。
展示室1牛や馬、駱駝(らくだ)、牛車を「月の砂漠を歩いているイメージで並べた」というのは、北魏時代の陶俑。6世紀の作品です。
中国の陶塑は、始皇帝の兵馬俑にみられるようにかなり前から高い技術がありますが、この時代の作品は単に写実的だけではない表現が特徴的。部分的にデフォルメされ、造形的な美しさや躍動感を表現しています。
北魏時代の陶俑朝鮮陶磁の展示からは《青花月兎文栗鼠耳角扁壺》をご紹介しましょう。こちらは18~19世紀の作品です。
壺の側面に栗鼠(りす)形の耳が付いた、可愛らしい壺。円窓+餅をつく兎は、月には兎が住むという中国の伝説によったものと思われています。
朝鮮陶磁続いて浮世絵。少し意外にも思えますが、実は
根津美術館で浮世絵が展示されるのは今回が初めてです。
奥村政信や鈴木春信らの初期の浮世絵から写楽、北斎、広重らの浮世絵黄金時代の作品まで、浮世絵の通史を辿るラインナップです。
展示室5浮世絵の展示は初めてということもあり、並べるまではやや不安もあったということですが、
根津美術館の落ち着いた雰囲気に浮かび上がる浮世絵はなかなかドラマチック。
浦上コレクションの浮世絵は鮮明な刷りが特徴のひとつですが、2色のLEDを用いて色彩を忠実に再現。細部まで堪能することができます。
展示室5世界で三枚しか確認されていない葛飾北斎《風流無くてなゝくせ 遠眼鏡》など、逸品も多数あります(浮世絵は6月23日までの前期で全て展示替え)。
根津美術館での展覧会はもちろんですが、ぜひ次の機会には、ミシュラン・グリーンガイドで山口県内最高ランクの2つ星を獲得している
山口県立萩美術館・浦上記念館でも見れたらと思います。(取材:2013年5月31日)
※ 作品は、全て山口県立萩美術館・浦上記念館蔵