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    レポート
    クリムト展 ウィーンと日本 1900
    東京都美術館 | 東京都
    初期から晩年まで、クリムトのすべて
    装飾的な作品で、国内外で高い人気を誇るグスタフ・クリムト(1862-1918)。昨年、没後100年を迎えた事を記念し、日本では過去最多となる25点以上のクリムトの油彩画が揃いました。ウィーン世紀末の精華を堪能できる展覧会が、東京都美術館で開催中です。
    グスタフ・クリムト《ユディトⅠ》1901年 ベルヴェデーレ宮オーストリア絵画館
    (左から)グスタフ・クリムト《音楽の寓意のための下絵(オルガン奏者)1885》年 ベルヴェデーレ宮オーストリア絵画館 / グスタフ・クリムト《カールスパート市立劇場の緞帳のためのデザイン》1884/85年 ベルヴェデーレ宮オーストリア絵画館
    (左から)エルンスト・クリムト《フランチェスカ・ダ・リミニとパオロ》1890年頃 ベルヴェデーレ宮オーストリア絵画館 / グスタフ・クリムト《イザベラ・デステ(ティッツァーノの模写)》1884年 ペレシュ国立博物館
    (左から)グスタフ・クリムト《赤子(ゆりかご)》1917年 ワシントン・ナショナル・ギャラリー / グスタフ・クリムト《女ともだちI(姉妹たち)》1907年 クリムト財団
    グスタフ・クリムト《ヌーダ・ヴェリタス(裸の真実)》1899年 オーストリア演劇博物館
    グスタフ・クリムト《ベートーヴェン・フリーズ》(原寸大複製) 1984年(オリジナルは1901-02年) ベルヴェデーレ宮オーストリア絵画館
    (左から)グスタフ・クリムト《アッター湖畔のカンマー城III》1909/10年 ベルヴェデーレ宮オーストリア絵画館 / コロマン・モーザー《冬の松林》1907年頃 ベルヴェデーレ宮オーストリア絵画館 / カール・モル《夕映えの白樺林》1902年頃 ベルヴェデーレ宮オーストリア絵画館
    グスタフ・クリムト《オイゲニア・プリマフェージの肖像》1913/14年 豊田市美術館
    グスタフ・クリムト《女の三世代》1905年 ローマ国立近代美術館

    今年は日本とオーストリア友好150周年。クリムトやウィーン世紀末に焦点を当てた大きな展覧会が、相次いで開催されます。


    本展は、ずばりクリムト展。初期から晩年までクリムトの傑作が揃います。


    クリムトは1862年、ウィーン生まれ。7人兄弟の長男です。14歳でウィーンの美術工芸学校に入学。修行時代はアカデミックな教育を受け、画家としての基礎力を身に付けました。


    在学中に、弟のエルンスト、同級生のフランツ・マッチェとともに「芸術家カンパニー」を結成。劇場装飾などを手がけます。


    ただ、クリムトが30歳の時に弟エルンストは急逝。同年には父も亡くなっており、相次ぐ不幸はクリムトの創作にも影響を与える事となります。



    クリムトは生涯独身でしたが、子どもは少なくとも14人いたとされています。母親の多くは、アトリエに出入りするモデルでした。


    クリムトが最も信頼していた女性は、弟エルンストの妻の妹、エミーリエ・フレーゲです。ふたりはプラトニックとされていましたが、近年、深い関係を伺わせる手紙も見つかりました。会場では、その手紙も展示されています。


    8章構成の本展で、メインといえるのが第5章「ウィーン分離派」。多くの人がイメージする、クリムトの典型例な作品が並びます。


    保守的なウィーン造形芸術家協会に反発して、1897年に結成されたウィーン分離派です。初代会長がクリムトでした。分離派会館の新設に際しては、ウィーン市から土地が無償で提供されるなど、為政者側とも関係は良好でした。


    《ユディトⅠ》はクリムトの代表作。 豪華な装身具を身に付けながら、裸身をさらして誘惑するユディト。油彩画に初めて本物の金箔を用いた作品とされています。


    全長34メートルの壁画《ベートーヴェン・フリーズ》も、見どころのひとつです。ベートーヴェンの交響曲第9番から着想した作品で、絵画・彫刻・建築・美術工芸・詩・音楽を総合的に融合しました。原寸大複製ですが、現地と同様にコの字型で展示されており、雰囲気を楽しめます。


    クリムトの創作テーマのひとつが「生命の円環」。老や死も臆する事なく描くように、ありのままの女性や、男女が愛し合うさまは、クリムトにとって生命そのものの表現ともいえます。


    《女の三世代》は、初来日。赤ん坊、若い女性、老女と、人生の三段階を描きました。酸化して黒ずんでいますが、背景は銀箔と思われます。


    1918年の1月に、55歳で亡くなったクリムト。奇しくもこの年は、エゴン・シーレ(画家)、コロマン・モーザー(デザイナー)、オットー・ワーグナー(建築家)も死去。そして、オーストリア=ハンガリー帝国は第一次世界大戦に敗れて崩壊したのもこの年です。


    まるでクリムトの死が引き金になったように、オーストリアは歴史と文化の両面で、大きな転換期を迎える事となりました。


    東京展の後に、豊田市美術館に巡回します(7/23~10/14)。


    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2019年4月22日 ]


    プレミアム美術館 クリムトプレミアム美術館 クリムト

    朝日新聞出版 (編集)

    朝日新聞出版
    ¥ 832

    料金一般当日:1,600円
     → チケットのお求めはお出かけ前にicon

    会場
    東京都美術館 企画展示室
    会期
    2019年4月23日(火)~7月10日(水)
    会期終了
    開館時間
    9:30~17:30
    休館日
    5月7日(火)、20日(月)、27日(月)、6月3日(月)、17日(月)、7月1日(月)
    住所
    東京都台東区上野公園8-36
    電話 03-3823-6921
    公式サイト https://klimt2019.jp/
    料金
    一般 1,600円 / 大学生・専門学校生 1,300円 / 高校生 800円 / 65歳以上 1,000円
    展覧会詳細 「クリムト展 ウィーンと日本 1900」 詳細情報
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