グスタフ・クリムト(1862~1918)は、19世紀末から20世紀初頭のウィーンで活躍した画家です。代表作《接吻》はオーストリアの芸術を代表する国宝的作品として位置付けられ、今や国外への出品は許されない作品となっています。写実的でアカデミックな画風から出発したクリムトは、やがて金箔を多用する「黄金様式」の時代を経て、装飾的で抽象的な色面と人物を組み合わせた独特の画風を確立、ウィーン・モダニズムの旗手として活躍しました。無垢な少女、魔性の女、運命の女…女性の様々な魅力を描き出した華麗な女性像は、国内外で圧倒的な人気を誇ります。
日本国内でも展覧会開催を希望する声は耳にしますが、クリムトは遅筆なうえ、作品がナチス・ドイツに接収されたり、戦火で焼失したりするなど歴史の波に翻弄され、現存する作品が多い作家とは言えません。また建物の天井画や壁画など、現地を訪れなくては実物を見られない作品も多々あります。
このたび、2018年のクリムト没後100年、2019年の日本・オーストリア友好150周年を記念して開催する本展は、クリムト作品をまとめて見ることのできる貴重な機会となります。
本展は、クリムト作品の世界的殿堂ともいえるウィーンのベルヴェデーレ宮オーストリア絵画館の所蔵作品を中心に、クリムトの画業の変遷と彼とともに活躍した同時代の画家たちの作品を紹介します。「黄金様式」の時代の代表作のひとつ《ユディトⅠ》など、日本では過去最多となる20点以上のクリムトの油彩画が揃います。
さらにクリムトが手がけた全長34mにも及ぶ壁画《ベートーヴェン・フリーズ》の精巧な複製も来日。ウィーンの分離派会館での展示を再現します。
また、19世紀末のウィーンで紹介された日本の工芸品や絵画を通して、クリムトが受けたジャポニスムの影響にも迫ります。
場所:東京都美術館 企画展示室
お問合先:03-5777-8600(ハローダイヤル)