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    レポート
    FUJI TEXTILE WEEK 2023
    富士吉田市下吉田本町通り周辺地域 | 山梨県
    テキスタイル(布)をテーマにした国内唯一の布の芸術祭、富士吉田で開催
    いたるところから富士山が見える抜群の環境。今年は西裏エリアでの展開も
    国内外11組のアーティストによるテキスタイルを軸にした作品が各所に展示

    富士山麓にある織物のまち、富士吉田。産業の歴史を根底に、伝統産業および地域活性を目的として2021年よりスタートした、国内唯一の布の芸術祭「FUJI TEXTILE WEEK 2023(フジテキスタイルウィーク)」が、今年も始まりました。


    富士山の撮影「映え」スポットとしてインバウンドに大人気の、本町2丁目交差点
    富士山の撮影「映え」スポットとしてインバウンドに大人気の、本町2丁目交差点


    ここでは国内外11 組のアーティストが、テキスタイルを軸にした作品を展示している「アート展」を中心に、作品をご紹介します。

    写真家の顧剣亭(1994-)は、今年3月まで使われていた山叶商店の建物の床面に広がる、巨大な布の作品を出展。富士吉田市の様々な時代の地図が、透け感のある生地にプリントされています。

    複層的なレイヤーの中に、時間の流れが凝縮されているかのような作品で、階段を登って、上から覗き込むように鑑賞することもできます。


    「FUJI TEXTILE WEEK 2023」会場より 顧剣亨《Map Sampling_Fujiyoshida》
    顧剣亨《Map Sampling_Fujiyoshida》


    同じく旧山叶の屋上にあるのは、テントのようなインスタレーションです。香港を拠点に活動する、ジャファ・ラム(1973-)の作品で、作品の向こうには富士山が見えます。

    使われている布は、市内の機屋から収集したB反(びーたん:傷などの都合により一般に流通しない布)。富士吉田では市内の至る所から富士山が見えますが、作品越しに見る富士山は、一風変わった切り取られ方になります。


    「FUJI TEXTILE WEEK 2023」会場より ジャファ・ラム《あなたの山を探して》
    ジャファ・ラム《あなたの山を探して》


    ネリー・アガシ(1973-)は、シカゴを拠点に多領域を横断して活動する著名アーティスト。今回の展示が、日本では初めての大規模な紹介となります。

    ネリー・アガシは空っぽになった山叶の建物で、いくつかの作品を展開。巨大な空間に広がる布の作品は圧巻です。


    「FUJI TEXTILE WEEK 2023」会場より ネリー・アガシ《mountain wishes come true》
    ネリー・アガシ《mountain wishes come true》


    池田杏莉(1997-)の作品は、使い古された家具や衣類たちの表面に、何十万枚もの薄い皮膚のようなものが重なっています。

    表面の「皮膚」は、富士吉田市在住でテキスタイル産業を支えてきた人たちの手足をシリコンで型取り、一枚一枚作ったもの。近寄ると手指のかたちが残っており、静かな作品の中に人の存在を強く感じさせます。


    「FUJI TEXTILE WEEK 2023」会場より 池田杏莉《それぞれのかたりて / 在り続けることへ》
    池田杏莉《それぞれのかたりて / 在り続けることへ》


    歓楽街「西裏」に氷を提供していた旧富士製氷を利用した「FUJIHIMURO」では、デザイン展「甲斐絹を読む」が開催されています。

    今から1世紀前、この地でつくられていた織物、甲斐絹(かいき)は、高度な技術を駆使した光沢で羽織の裏地として人気を博し、夏目漱石や谷崎潤一郎などの文豪も魅了しました。

    今回の展示では、着物文化の衰退とともに幻の織物になっていったた甲斐絹を、これまで一般に公開されてこなかった資料も含めて紹介しています。


    「FUJI TEXTILE WEEK 2023」会場より デザイン展「甲斐絹をよむ」
    デザイン展「甲斐絹をよむ」


    津野青嵐(1990-)の作品は、祖母への慈愛に満ちた暖かいプロジェクトです。寝たきりになってしまった津野の祖母が、介護ベッドの上でも着れるようにと、祖母が長年集めてきた布を用いて、シーツと一体になった赤い衣服を作りました。

    精神科の看護師として勤務した後に、創作の道に進んだ津野。作品について「垂直方向への力を失った祖母を応援したいと思いつつ、水平方向に溶けていく祖母も愛おしく感じている」と語っていたコメントも、とても印象に残りました。


    「FUJI TEXTILE WEEK 2023」会場より 津野青嵐《ねんねんさいさい》
    津野青嵐《ねんねんさいさい》


    ユ・ソラ(1987-)の作品は、ソファやテーブル、Amazonの箱、牛乳パックなど。ありふれた日常の品々ですが、牛乳の成分表からレシートの文字まで、すべて黒い糸で縫う事で表現しています。

    ユ・ソラは、刺繍の平面作品や立体作品のインスタレーションなど、この作品のように白い布と黒い糸を使った作品で知られています。


    「FUJI TEXTILE WEEK 2023」会場より ユ・ソラ《日々》
    ユ・ソラ《日々》


    富士吉田の歓楽街エリアである西裏。「織機をガチャンと織れば万の金が儲かる」とされたガチャマン景気時代には大いに賑わい、現在でも個性的な店が数多く残ります。

    西裏の新世界乾杯通りには、布がはためくゲートが登場しました。布を潜り抜けて進んで行くと、各所にハサミも用意されており、気に入った布は自由に切って持って帰ることもできます。


    「FUJI TEXTILE WEEK 2023」会場より 新世界乾杯通り「TSUBAME STREET PROJECT」
    新世界乾杯通り「TSUBAME STREET PROJECT」


    90年代には雑誌の読者モデルとして、後にアーティストとしての活動を始め、常に高い注目を集めている清川あさみ(1979-)。本展では蔵の2階と3階に作品を展示しました。

    3階の大きな作品は、Serendipityシリーズの新作。重厚なマチエールで、絵画のような大作でした。


    「FUJI TEXTILE WEEK 2023」会場より 清川あさみ《わたしたちのおはなし》
    清川あさみ《わたしたちのおはなし》


    台湾の人気クリエイター、Cherng(チェン)によるキャラクター「LAIMO」を探す企画も開催中。西裏エリアの建物の壁面10カ所にLAIMOが描かれているので、ぜひ探してみてください。

    最後に、これを機に富士吉田を訪れようと訪問しようとしている方へ。富士山が綺麗に見えるのは、基本的に午前中です(もしくは夕方)。頭に入れて、スケジュールを組んでみてください。新宿から高速バスで、わずか1時間半ほどです。

    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2023年11月21日 ]

    子どもアート展
    スタジオ ゲオメトル《Changes of the Mountain》
    沖潤子《anthology》
    パシフィカ コレクティブス《Small Factory》
    筒 | tsu-tsu《unsound dresser:化粧箱、鳴ラナイ》
    生地展
    会場
    富士吉田市下吉田本町通り周辺地域
    会期
    2023年11月23日(木)〜12月17日(日)
    会期終了
    休館日
    月曜日
    住所
    山梨県富士吉田市下吉田本町通り周辺地域
    公式サイト https://fujitextileweek.com/
    料金
    一般 1,200円
    展覧会詳細 「FUJI TEXTILE WEEK 2023」 詳細情報
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