皇居東御苑に「皇居三の丸尚蔵館」がいよいよ誕生! 皇室に代々受け継がれた美術品を保存・研究・公開してきた宮内庁三の丸尚蔵館が生まれ変わり、新たな施設がお披露目となりました。
開館記念の展覧会では、皇室に受け継がれてきた貴重な品々の中から、選りすぐりの名品を4期に分けて公開します。
皇居三の丸尚蔵館 外観
旧・宮内庁三の丸尚蔵館は、1993年に開館。上皇陛下と香淳皇后によって国に寄贈された皇室ゆかりの美術工芸品の保存、研究、公開するために設けられました。
これまでに90回の展覧会が開催されてきましたが、開館30年を迎えるに当たり、収蔵庫と展示室を拡充し、より充実した活動を行うために建て替えられました。
管理・運営も宮内庁から独立行政法人国立文化財機構に移管。収蔵品(約6,100件)も宮内庁から文化庁に管理換され、文化庁から国立文化財機構に無償貸与されました。
皇居三の丸尚蔵館 内観
館内は長い廊下の左側にふたつの展示室。展示室1は440㎡、展示室2は250㎡で、計690㎡。160㎡だった旧施設に比べ、格段に広くなりました。
開館記念展「皇室のみやび-受け継ぐ美- 第1期・三の丸尚蔵館の国宝」は、奥の展示室2で開催されています。
「皇室のみやび-受け継ぐ美- 第1期・三の丸尚蔵館の国宝」会場風景
早速、展示作品をご紹介しましょう。展示作品は撮影可能なものが多いのが嬉しいポイントで、今回は出品されている国宝全てが撮影可能です。
国宝《春日権現験記絵》は、藤原氏の氏神、奈良・春日大社の草創と、霊験の数々を描いた絵巻です。宮廷絵師の高階隆兼による絵は、豊かな色彩と精緻で気品あふれる描写が特徴的で、中世やまと絵の代表的な作品です。明治時代に薦司家から皇室へ献上されました。
国宝《春日権現験記絵》巻十二 高階隆兼 鎌倉時代 延慶2年(1309)頃 皇居三の丸尚蔵館収蔵[展示期間:11/3〜11/26]
国宝《蒙古襲来絵詞》後巻は、元寇のうち弘安4年(1281)の2度目の来襲を描いたもの。絵巻の主人公である竹崎季長は赤い甲冑姿で出陣。この後にモンゴル軍と戦うことになります。
日本史上に残る歴史的な大事件を描いた同時代の絵画としては、唯一の作品。明治時代の御買上品です。
国宝《蒙古襲来絵詞》後巻 鎌倉時代(13世紀)皇居三の丸尚蔵館収蔵[展示期間:11/3〜11/24、巻替あり]
そして、展覧会の目玉といえる伊藤若冲《動植綵絵》。さまざまな動植物を30幅にわたって描いた若冲の傑作で、日本における花鳥画を代表する作品といえます。
若冲が絵に専念した40歳頃から約10年をかけ制作し、自ら相国寺に寄進しました。明治時代に相国寺より皇室へ献上されています。
第1期の前期(11/3~11/26)は《秋塘群雀図》《南天雄鶏図》《老松白鳳図》《菊花流水図》の4幅。後期(11/28〜12/24)は《梅花群鶴図》《棕櫚雄鶏図》《貝甲図》《紅葉小禽図》の4幅に展示替えされます。
国宝《動植綵絵》伊藤若冲 (左から)《秋塘群雀図》《老松白鳳図》《南天雄鶏図》《菊花流水図》 江戸時代(18世紀)皇居三の丸尚蔵館収蔵[展示期間:11/3〜11/26]
手前の展示室1では、天皇皇后両陛下のゆかりの品を紹介する特別展示「御即位5年・御成婚30年記念 令和の御代を迎えて-天皇皇后両陛下が歩まれた30年」も開催中です。
今年は令和5年なので、天皇陛下の御在位から5年。そして、天皇皇后両陛下の御成婚から、ちょうど30年の節目でもあります。
展覧会にはご結婚の儀式で用いられたご装束やドレス、御即位の儀式のご装束や調度品、愛子内親王殿下の健やかな成長の願いが込められた品々などが並びます。
特別展示「御即位5年・御成婚30年記念 令和の御代を迎えて-天皇皇后両陛下が歩まれた30年」会場風景
前述したように、展覧会「皇室のみやび-受け継ぐ美-」は4期にわたって展開。いにしえより伝わる逸品はもちろん、明治・大正・昭和の天皇皇后の日常をしのばせる品々なども公開されます。
なかでも注目は第4期「三の丸尚蔵館の名品」(2024年 5/21〜6/23)。ここでも伊藤若冲《動植綵絵》の別の4幅が展示されることに加え、狩野永徳《唐獅子図屏風》も登場します。
なお今回は部分開館で、全面開館は2026年度(令和8年度)の予定です。全面開館時には610㎡の展示室3ができるため、展示面積は1,300㎡になります。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2023年11月2日 ]