「東京ミッドタウン、国立新美術館、六本木のまちなか」編
東京ミッドタウンのプラザB1 メトロアベニューでは「Street Museum 2023」が開催されています。インスタレーション作品に混じって、ジュエリー展やミネラルショーに出品されていそうな、きれいな緑色のジュエリーのルースが展示されています。
ネックレスやペンダント、リングに加工されているわけでもなく、美術展の展示作品としては、ずいぶんと違和感があったので、お話をきいてみました。
井村一登 《loose reflection》
素材は天然石ではなく、様々な地域から採取された黒曜石を溶かして混ぜ合わせたもの。土地の記憶を内包する黒曜石を混ぜて石器や宝石を作ることが、作家のテーマである「映らない鏡」に結びついています。出品されている作品の中で一番小さなものですが、込められたコンセプトはとても大きく、見ただけではわからないので、お話を聞けて良かったです。
インクルーシブ・アート・プログラムを見学するため、新国立美術館に向かいます。こちらでは、10名くらいのグループに分かれて、鴻池朋子の《狼ベンチ》と《武蔵野皮トンビ》を鑑賞しました。1作品につき30分くらい、ゆっくり時間をかけて参加者で意見を出し合いながら、鑑賞します。
鴻池朋子 《武蔵野皮トンビ》
アートナイトでは、以前から作品鑑賞の一助として、数種類のガイドツアーを実施しています。今年は、外国語ガイドツアーとインクルーシブ・アート・プログラムが実施されました。残念ながらガイド・ボランティアによる「まち歩きツアー」は実施されませんでした。とても楽しいので、来年は復活してくれることを期待します。
新国立美術館の3階の中庭では、しばたみづきの制作パフォーマンスが公開されています。芝生の中に点在するつぼは、濡れていて、触るとひんやりとします。焼かない土器なので、雨が降ると溶けて崩れてしまいそうですが、作家としてはそれも面白いと考えているようです。
しばたみづき 《つぼなんかをつくる》
佐藤圭一の《nutty nutty》は、六本木駅近くの警察署跡地に展示されています。怪しげな表情を浮き彫りにした、おわん型の作品が、スポットライトに浮かび上がります。
ゲートの近くで見ていると、隣のグループからこんな会話が聞こえてきました。 「誰かに似せて作ったんだろうか」、「いや。昔、ここは警察だったから、怨念のようなものが固まって、こんな顔になったのさ」、「みんな、そっぽ向いてる」、「写真、写真」など。 佐藤の奇妙な作品は、自然と感想を人に話したくなる作用を持っているらしいです。
佐藤圭一 《nutty nutty》
まちなか作品は、どこも込み合っていますが、東南アジアの民話を下敷きにした、ジャン・シュウ・ジャンの人形劇の映像作品も、よく混雑していました。大勢の歩行者が通路に立ち止まって作品を見ていくので、真夜中でも誘導と保安のスタッフの人々が忙しそうに働いていました。
ジャン・シュウ・ジャン 《熱帯複眼-動物故事系列-》
六本木交差点に設置された長谷川仁の《六本木のカタガタ》も、よく混雑していました。《六本木のカタガタ》は、台所のアルミホイルを使った、安っぽい人型の張りぼてなのですが、不思議と六本木交差点の風景になじんでいます。
そこに、奇妙なコスプレの一行が来ました。アーティスト・ユニットの「このよのはる」と、友人たちです。その他にも、秋葉原で出会いそうな、ふわふわのドレスの観客などが、順番待ちして記念撮影をしていました。
長谷川仁 《六本木のカタガタ》 (撮影 黒坂ひな)
このよのはるは、来月、神保町でパフォーマンス「百鬼夜行 東京アタック大作戦7(仮)」を計画していて、現在、参加者募集中だそうです。
週末のまる2日間、とても混沌とした、アートナイト特有の時間を過ごしました。ぜひ、来年もパワーアップして、継続してほしいと思います。
[ 取材・撮影・文:ひろ.すぎやま / 2023年5月27日 ]
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