わび茶の大成者・千利休。多くの武将と交流した利休は細川家とも関わりが深く、永青文庫には大名家伝来の様々な茶道具が所蔵されています。
利休と細川三斎(細川家2代・忠興)ゆかりの名品を中心に、細川家に伝わる茶道具の数々を紹介する展覧会が、永青文庫で開催中です。
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永青文庫 入口 「永青」は、細川家の菩提寺である京都建仁寺塔頭永源庵の「永」と、細川藤孝の居城・青龍寺城の「青」から命名されました。
千利休と細川家の関係は、細川家初代の藤孝(幽斎)から。ともに信長や秀吉の茶会に参席するなど、親しく交わりました。
2代忠興(三斎)は、利休の高弟「利休七哲」のひとりです。三斎は利休を敬慕し、師の茶風を忠実に受け継いだと伝わります。
![永青文庫「細川家の茶道具 ―千利休と細川三斎―」会場より (左から)《細川三斎(忠興)像》乾英宗単賛 寛文10年(1670) / 《細川幽斎(藤孝)像》江戸時代(17世紀)[ともに展示期間:5/20~6/18]](https://www.museum.or.jp/storage//article_objects/2023/05/24/eb43db12f0de_l.jpg)
(左から)《細川三斎(忠興)像》乾英宗単賛 寛文10年(1670) / 《細川幽斎(藤孝)像》江戸時代(17世紀)[ともに展示期間:5/20~6/18]
細川家には、利休ゆかりのさまざまな茶道具が伝わっています。
《唐物尻膨茶入 利休尻ふくら》は、利休が所持したと伝わる茶入です。利休は尻膨茶入を複数点所持しており、そのうち一点が関ヶ原合戦の軍功として、徳川将軍家から三斎に拝領されました。
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重要美術品《唐物尻膨茶入 利休尻ふくら》中国 南宋~元時代(13~14世紀)
《瓢花入 銘 顔回》は、利休が愛玩した花入です。巡礼が腰につけていた瓢箪を利休が所望し、のこぎりで切って花入にしたと伝わります。
顔回は、質素ながらも活き活きと暮らした、孔子の一番弟子の名前です。利休が目指した茶の道を、顔回の生き方の中に見出して、その名をつけたのでしょうか。
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《瓢花入 銘 顔回》千利休作 桃山時代(16世紀)
展覧会で注目されるのが「花伝書抜書」紙背文書。「花伝書抜書」は、三斎が『風姿花伝』を写したもので、解体・調査したところ、古田織部書状などの裏側を利用していることが分かりました。本展で初公開となります。
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《古田織部書状》細川忠興(三斎)宛 桃山時代(16世紀)
会場では特別展示として、今年が生誕450年にあたる、沢庵宗彭の墨蹟や頂相も紹介されています。
沢庵は京都・大徳寺の住持をつとめた、江戸時代前期の禅僧。細川家とは幽斎から4代光尚まで交流がありました。
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特別展示「沢庵宗彭の墨蹟」
下のフロアに進むと、細川家に伝来したさまざまな茶道具を展示。茶碗、茶杓、茶壺、茶入、薄茶器など、各道具の解説とともに並びます。
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「細川家伝来 茶道具いろいろ」
さらに下のフロアには、近現代細川家四代が手がけた茶道具も展示されています。文武両道を重んじた細川家では、歴代の当主が文化芸術に深くかかわっていました。
ここでは、永青文庫の設立者の16代護立、17代護貞、当代護熙、護光が手がけた茶道具が展示されています。
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《黒茶盌 幽棲》細川護熙作 平成19年(2007)個人蔵
幕末や戦後の混乱期に、多くの大名家の宝物が散逸するなか、細川家によって大切に守り伝えられてきた貴重な茶道具を楽しめる展覧会。「茶道具いろいろ」の章で道具についてわかりやすく紹介されていますので、茶の湯に詳しくない方にもおすすめしたいと思います。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2023年5月19日 ]