大阪の梅田、難波とはまた一味違う静かな空気を漂わせる中之島。そんな中にそびえる巨大なBLACK CUBEが大阪中之島美術館です。
敷地の庭にはこの建物の飼い猫よろしくヤノベケンジ作のSHIP’S CATがお出迎えしてくれます。毎回訪れるたびに、とても楽しいウキウキした気分にさせてくれるお気に入りの美術館です。
《大阪中之島美術館とSHIP‘S CAT》
今回はこの美術館で初となる佐伯祐三展。展覧会のキャッチコピーは「自画像としての風景」。自らが生活した街や人物を描きながら、彼の心情が込められた140点以上もの作品達を見ることができます。
会場入口
プロローグ 自画像
学生の頃からの自画像が何点か飾られています。本人なのですがどれも捉え方が違っています。 顔を塗りつぶされた自画像。どの巨匠にも近くない自分だけが立てる境地を求めた、手探りの日々が感じられます。
佐伯祐三《立てる自画像》1924年 大阪中之島美術館
佐伯祐三《パレットをもつ自画像》1924年 ENEOS株式会社
第一章 大阪と東京
ここでは日本での作品が集められています。生まれ育った大阪の風景。上京した美術学校時代とパリから一時帰国時代に描いた東京の風景。これらの風景画から、貪欲に独自の視点で探究し続ける姿が感じられます。
会場風景
一時帰国時代に描かれた下落合風景と滞船の連作からは、いつかパリに戻るまでに、という静かな沸々とした想いが醸し出されています。 また彼の身近な人々の人物画や静物画は、佐伯氏らしいとても早い筆使いで素早く特徴を捉えた作品群です。
佐伯祐三《下落合風景》1926年頃 和歌山県立近代美術館
第二章 パリ
佐伯氏は1924年から1928年の間に2度にわたって、妻子と共にパリで留学生活をしています。パリではヴラマンクを師と仰ぎ、一から自分の絵を模索し直しました。
会場風景
人は人に魅了され、尊敬するその人に近づき、自分だけの光を輝かせようと努力する。この頃の作品群は、そんな日々を感じさせる熱いエネルギーが絵筆に伝わり、見え隠れしているようです。
佐伯祐三《オーヴェールの教会》1924年 鳥取県立博物館
第三章 ヴィリエ=シュル=モラン
アカデミックな作風から逸脱し、独自の世界を目指し続けた佐伯氏。パリから離れたモラン村では、朝から晩までへとへとになるまで描き続ける濃厚な日々を送りました。その熱量は画風に現れ、目の中に飛び込んできます。これほどまでにほとばしるエネルギーを感じる画家は初めてです。
佐伯祐三《煉瓦焼》1928年 大阪中之島美術館
エピローグ 人物と扉
雨の日もずぶ濡れになってでも制作に打ち込んだことにより体調を崩し、床に伏せていた時の郵便配達夫との出会い。祐三と言えばこの郵便配達夫というくらい有名な作品のモデルですが、その後再び出会うことはなかったようです。
佐伯祐三《郵便配達夫》1928年 大阪中之島美術館
人生の最後の扉のようなこの作品。佐伯氏はこの扉を開けてまた新たな世界に挑んでいるように思えました。
佐伯祐三《扉》1928年 田辺市立美術館(脇村義太郎コレクション)
展覧会を通して、やはりその熱量がとても印象的。たくさんのパッションを頂きました。本当に素晴らしい作品群を見せていただきありがとうございます。と、佐伯画伯にお伝えしたいそんな一日でした。
[ 取材・撮影・文:Marie / 2023年4月14日 ]
読者レポーター募集中!あなたの目線でミュージアムや展覧会をレポートしてみませんか?