2019年に大阪の国立民族学博物館(みんぱく)で開催された「驚異と怪異――想像界の生きものたち」が、福岡市博物館にやってきました。
みんぱくでの展示品だけではなく、九州各地で所蔵されている人魚や河童なども追加され、世界の霊獣・幻獣・怪獣が約350点展示されています。会場に入るとまず漫画家・五十嵐大介氏描き下ろしの「異類の行進(マーチ)」パネルが展示されています。
会場入り口
会場では「この世のキワにいるかもしれない」想像界の生き物たちが、水・地・天というセクションに分けられていて、世界各地から集められた展示品の共通点や違いを見比べながら鑑賞できます。最初は人魚や龍など「水」に潜む生き物達のエリアです。
会場風景
精霊・魔物・未確認生物が棲むとされる「地」を巡る生き物たちのエリアでは、宮崎や鹿児島に伝わる巨人やごろどんの巨大な下駄と刀をはじめ、多くの絵画や人形、祭具を見ることができます。
やごろどんの下駄と刀
国立民族博物館所蔵の仮面や絵画
天の使いや神の乗り物とされていた「天」に羽ばたく霊鳥・怪鳥・鳥人、天狗や天馬などの生き物たちが展示されるエリアには、火災を防ぐ火伏せの神として信仰されている国玉神社(福岡県豊前市)の天狗像があります。
《木造天狗坐像»«木造八天狗像》 国玉神社所蔵
次に続くのは「驚異の部屋」の展示です。驚異の部屋とは、大航海時代にヨーロッパで流行した様々な珍品のコレクション室で、博物館の原型となったと言われています。
会場風景
湯島聖堂で開催された日本初の博覧会の錦絵も展示されています。名古屋の金鯱をはじめ多くのコレクションが並んでいて、当時の人々がどのように展示を楽しんだのかとても気になります。
錦絵 《古今珎物集覧 元昌平坂聖堂に於て》
湯本コレクションとして、広島の湯本豪一記念日本妖怪博物館(三次もののけミュージアム)の所蔵品が24点展示されています。湯本豪一氏のコレクションは質・量共に日本一と言われており、写真の他にも龍の頭蓋骨と尾や烏天狗のミイラもあり不気味な魅力に惹き付けられます。
右から《人魚の骸骨》《三頭龍のミイラ》《海馬の頭蓋骨》
龍宮寺(福岡市博多区)に伝わる人魚の掛け軸と骨、そして九州各地から集められた幻獣資料が今回の特別展限定で展示されています。福岡市博物館所蔵の錦絵や絵巻も見ることができ、ローカルな展示によって想像界の生き物をより身近に感じられる気がします。普段、お寺では一般公開されていない人魚の骨は必見です。
《人魚の掛け軸》《人魚の骨》 龍宮寺所蔵
最後には、コロナ禍で一躍有名になったアマビエ関連グッズが並んでいます。博多祇園山笠の団扇のイラストをはじめ、伝統工芸や郷土玩具、信仰対象として活躍するアマビエには『驚異と怪異』が恐怖ではなく娯楽や人々の癒やしにもなるのだと実感させられます。
アマビエ関連グッズ
特別展の会場外、1階にある『みたいけんラボ』でも、日本各地のお祭りや芸能などの映像が上映されており、関連図書や資料の展示が行われています。日本各地のお祭りや芸能などの映像上映もあり、常ならざる音を聞くことで耳を通して異界を感じる体験もできるのでこちらもオススメです。
福岡市博物館『みたいけんラボ』での映像上映
[ 取材・撮影・文:mai / 2023年3月10日 ]
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