極端な細身と引き伸ばされた人物彫刻。20世紀におけるもっとも重要な彫刻家の一人、アルベルト・ジャコメッティの展覧会が大阪御堂筋にあるエスパス ルイ・ヴィトン大阪で開催中です。フォンダシオン ルイ・ヴィトンのコレクションを主催とする展覧会を全世界で紹介するプロジェクト「Hors-les-murs(壁を越えて)」の一環で、大阪では3回目となる展覧会です。
ALBERTO GIACOMETTI エスパス ルイ・ヴィトン大阪での展示風景(2023年) Exhibition view at Espace Louis Vuitton Osaka (2023) Fondation Louis Vuitton, Paris © Succession Alberto Giacometti / Adagp, Paris 2023 Photo credits: © Jérémie Souteyrat / Louis Vuitton
本展では、フォンダシオンが所蔵する7点の傑作が一堂に会するというなんとも贅沢な空間が広がっています。
展示風景
会場の壁色はグレーにオレンジをポイントで使用。シックで落ち着いた空気が流れています。アトリエでのジャコメッティの写真が壁2面に大きく引き伸ばされていて、アトリエで作品をみているような気になっていきます。
まず目を惹くのが、女性の裸体を扱ったジャコメッティ最後の作品《大きな女性立像 Ⅱ》。彼が制作した中で一番大きな彫刻作品で、約3メートルの高さがあります。この作品はアメリカ人の建築家ゴードン・バーシャンフトの依頼を受け、ニューヨークにある銀行の広場に設置するために構想されました。
ALBERTO GIACOMETTI エスパス ルイ・ヴィトン大阪での展示風景(2023年) Exhibition view at Espace Louis Vuitton Osaka (2023) Fondation Louis Vuitton, Paris © Succession Alberto Giacometti / Adagp, Paris 2023 Photo credits: © Jérémie Souteyrat / Louis Vuitton
ALBERTO GIACOMETTI エスパス ルイ・ヴィトン大阪での展示風景(2023年) Exhibition view at Espace Louis Vuitton Osaka (2023) Fondation Louis Vuitton, Paris © Succession Alberto Giacometti / Adagp, Paris 2023 Photo credits: © Jérémie Souteyrat / Louis Vuitton
写真ではわかりにくいかもしれないですが、《男の頭部》《男の胸像》《座る男の胸像》の3作品の色にハッとさせられました。過去に見てきたジャコメッティの作品はほぼ黒、または黒に近いこげ茶色。もしくはいつの間にかそう思い込んでしまっていたのかもしれません。しかしこの3作品は、外からの光を受け、熟す前のオリーブの実のようなグレーがかった青緑色をしているのです。この会場の特徴の一つである開放的な大きな窓と、そこから注ぐ自然光が新しい作品の魅力を教えてくれました。ライトだけの光ではこんなに色を意識しなかったかもしれません。
ALBERTO GIACOMETTI エスパス ルイ・ヴィトン大阪での展示風景(2023年) Exhibition view at Espace Louis Vuitton Osaka (2023) Fondation Louis Vuitton, Paris © Succession Alberto Giacometti / Adagp, Paris 2023 Photo credits: © Jérémie Souteyrat / Louis Vuitton
ジャコメッティのドキュメンタリー映像の1コマ
本展ではドキュメンタリー映像も紹介されています。2人の監督によって1966年ジャコメッティが亡くなった年に制作されました。監督の1人エルンスト・シャイデガ―は本来写真家で、ジャコメッティの制作の様子などを撮影する親しい間柄だったそうです。彼へのインタビュー、15歳の頃の両親をモデルにした絵画やデッサン、実家のスイスによく帰っていたというエピソードなど、ジャコメッティについて様々な事柄を知ることができます。なんと彼自身の葬儀までも収められていて驚きです。故郷のスイスで多くの友人が葬送する様子と、作品から受けるジャコメッティの印象とにギャップがあり、実際はどんな人だったのだろうと一層興味が湧きたちます。映像は、この展示に合わせて日本語訳がつきました。貴重な機会をお見逃しなく。
展示風景
ケースに映り込む人間と彫刻作品が交差し、すべてに命があるようです。ここエスパス ルイ・ヴィトン大阪の会場でしか味わうことのできないジャコメッティの世界が広がっています。
フォンダシオン ルイ・ヴィトンの紹介セクションにあるフランク・ゲーリーの文字とドローイング
外観
[ 取材・撮影・文:カワタユカリ / 2023年2月22日 ]
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