熱海の魅力をアートで再発見することができるアートイベント「ATAMI ART GRANT 2022」がはじまりました。2021年にスタートし、2回目となる今回のテーマは「“渦 ‒ Spiral ATAMI”」。熱海の街で様々な作品に出会うことができます。
ACAO SPA & RESORT HOTEL ACAO ANNEX Hashel Al Lamki 《Lucy》
「ATAMI ART GRANT 2022」は、アーティストが滞在し作品制作をする「ACAO ART RESIDENCE」と、アーティストをサポートする仕組み「ATAMI ART GRANT」を二本の柱で取り組まれています。 「ACAO ART RESIDENCE」によって集められた作品と、南條史生や隈研吾ら7名の審査員により通過した公募作品を合わせて50作家の作品を約20の会場で楽しむことができます。
メイン会場となっているのは、ACAO SPA & RESORT。ホテルのエントランスから続く現代アートのギャラリースぺースとなっている回廊やHOTEL ACAO ANNEX(旧ニューアカオ館)をはじめ点在する作品をいくつか紹介します。
ACAO SPA & RESORT 回廊 大小島真木 《木と石の発芽》
ANNEXの15階のダンスホールでは、UAE出身の作家・Hashel Al Lamkiの作品が会場全体に吊らされています。日差しが舞い込む室内にUAEのパール産業を象徴とする作品群は、枕カバーやシーツをキャンバスに天然顔料を使用。パールとそれを見つける過酷なダイバーへのオマージュ作品となっています。
Hashel Al Lamki 《Lucy》
奥の部屋では、紫外線に反応する水糸を用いてブラックライトをあてた森貴之による作品が現れます。光が当てられた建物やオブジェはアウトライン化され、まるでCGのようにもみえます。以前は料亭として使われていた高低差のある空間と、奥の平面的な茶室空間の対比も感じることができます。
森貴之 《View Tracing #4 “KUROSHIO”》
17階では、巨大な“笑い泣き”の絵文字のバルーンが登場。六本木アートナイト2022のミッドタウンでの展示でも話題を呼んだ松田将英の作品をフロアいっぱいに感じることができます。
このフロアでは、鑑賞者が作品に関わることで起きる事象を作品にしている飯川雄大の作品も展示。彫刻の森美術館で開催中の「飯川雄大 デコレータークラブ 同時に起きる、もしくは遅れて気づく」と熱海でリュックが行き来するというインスタレーションを展開しています。
松田将英 《The Big Flat Now》
外に目を向けると旧ニューアカオ館の名残を感じさせる看板が残されています。「ニューアカオ」の文字は、夕方17時から点灯。“アカ”“アオ”“カオ”といった文字に光る看板は、小金沢健人によってプログラムされたものです。
小金沢健人 《ニュー ア / NEW A》
2階の回廊には、映像作品を制作する伊阪柊と中村壮志によるユニットMANTLEの作品が登場。大陸の移動やプレートの沈み込みを感じさせる映像や衝撃音から、まるで日常の世界から地下の世界へと繋がる入口へと誘われていくような感覚に陥ります。
MANTLE (Shu Isaka + Soshi Nakamura) 《simulation#1》
藤田クレアは、動力的でメカニックな壮大で精巧な装置を制作しています。静岡県で拾ったという石英がぶつかり、その衝撃で発生した少量の電気が光ることで閃きをみせる作品が階段の踊り場に現れます。響きわたる石のぶつかり合う音は、幻想的な雰囲気を醸し出します。
藤田クレア 《Whispers -ver. Atami-、The Weight of Power -prototype 01-》
1階の旧露天風呂の男湯・女湯には田中勘太郎とGROUPの作品が展示されています。田中勘太郎は、赤い光を使い過去と現在を表すインスタレーションを制作。熱海駅近くのギャラリー「Article」では指が海底を歩き続ける、地球の成り立ちを想像させる様な映像作品も見ることができます。
田中勘太郎 《rip⇄tide》
ホテル以外の会場も紹介。バラ、ハーブや紅葉など四季折々の自然を楽しめる「ACAO FOREST」では“熱海で庭をつくりたい”という藤倉麻子の作品を展示。ビニールに覆われた空間の中には、藤倉が制作に頻繁に使用する植物や銀色の岩が配置されています。
建築家・隈研吾による設計の人々が集うカフェ「COEDA HOUSE」などフォトジェニックなスポットも多い「ACAO FOREST」のエリアは、今後もアーティストが作品制作できるスペースを拡張したいと考えているとのこと。
藤倉麻子 《日の光保存場 ~ ドラセナ大会 ~》
熱海魚市場では、人の顔をモチーフに絵画を制作している大野光一の作品が展示されています。絵の具を塗り重ね、質感が1番良い状態で作品を完成させる大野の描く人物は、特定のだれかではなく皮膚の裏側にその人の魂が感じられます。 会期中には、仮面づくりワークショップ“あなととかなたの顔をたぐる”も開催されます。
大野光一 《遠くにみえる、何もみえない》
各会場に設置されたNFT作品にも注目です。QRコードをスキャンし登録をすれば、無料で作品が入手可能に。まだNFTに馴染みでない方も、携帯の中でアート作品を所持できる体験を試すことができます。
また、熱海ビールとコラボレーションしたラベルのビールも作成され、図時熱海の酒屋などで販売されています。熱海への旅行や温泉とアートと合わせて楽しんでみては。
[ 取材・撮影・文:坂入 美彩子 2022年11月5日 ]