チョコレート……ほろ苦く甘美な神様の食べ物。そんなチョコレートのミュージアムがあるそうです。その名も「felissimo chocolate museum」。2021年10月に開館し、世界中のチョコレートのパッケージを収蔵し展示するとともに、チョコレートやカカオに関する歴史・文化を発信しています。

「人生はチョコレート、苦みが甘みを引き立てる」
神戸の海の潮風に吹かれて、フェリシモ社屋に掲げられたこのコピーを見上げると、気分が高まります。アルコールデビューしてしまった幼き日のウィスキーボンボンや、割線を気にせずかじった一人暮らしの日の板チョコなど、チョコと思い出はなぜかリンクしやすいような気がします。

1. prelude 序章
初めの展示室は薄暗闇!光る直方体の上にカカオ豆の皮がてんこもりで、チョコのいい匂いが漂います。カカオの学名「テオブロマ・カカオ」の「テオブロマ」とはギリシャ語で「神様の食べ物」という意味で、なんとなくおごそかな気持ちになります。

異世界への入口のような低き門を抜け……

2. creative walk チョコのパッケージの常設展[過去]
次の細長い展示室では、収蔵品の常設展を開催。常設といえど、半年に一度展示を切り替えるそうで、2022年10月16日までは「Morozoff-90周年の記憶-」と題して、神戸のモロゾフの創業当時からのオリジナルパッケージが展示されています。

創業当時から1950年頃のパッケージ。

パッケージの制作プロセスも見どころのひとつ。

3. art square カカオ×アートの企画展[未来]
続いて、カカオとアートを掛け合わせた企画展の展示室。こちらは1年ごとの展示替えで、2022年10月16日までは「AMAI-Valerio Berrutiの世界-」を開催。イタリアの現代美術家、ヴァレリオ・ベッルーティ氏がジュート麻(カカオ豆輸送袋の素材)やアルミ箔に描いた絵が展示されています。シンプルなチョコ色の描線がかわいらしいです。

4. imagination picnic ひなたぼっこコーナー
ここで陽光差し込むくつろぎの場所が。チョコ関連書籍がならぶ本棚、椅子、フォトスポットまであります。『チョコレート戦争』『チョコレート工場の秘密』などに夢中になった者としては、チョコ文学の展示にも期待しています。

フォトスポットのチョコはパーツごと外せます。

5. symphonic forest チョコレートパッケージの収蔵展示
壁一面のチョコ色の棚にパッケージがずらり。建物探訪好きとパッケージ好きが相まって、1日眺めたい衝動にかられます。

6. island gallery 現在進行形のチョコ/カカオの企画展[現在]
収蔵展示の中央では、現在のチョコ/カカオに迫る企画展が行われます。半年ごと展示替えで、2022年10月16日までは「6 Essences-チョコレートを表現する6人の知覚-」と題し、日本を代表する6人のショコラティエのチョコ作りに不可欠なグッズが展示されています。

例えば、三枝俊介氏は影響を受けた2冊とマシーン。自家製チョコを作りはじめた当初に使っていた機械で、チョコ作りの原点が感じられます。

外面(パッケージ)から作り手の内面まで、時空を超えてチョコにまつわるあれこれを展示するチョコレートミュージアム、フェリシモならではの「しあわせ」に包まれていました。ショップやワイナリーも併設し、ミュージアム後の海を見ながらの一献は極上。オープンして1年弱、今後の展開も見逃せません。
[ 取材・撮影・文:ポラン・シャ / 2022年3月31日 ]
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