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    越後妻有 大地の芸術祭 2022(レポート その3 中里・津南)
    新潟県 | 新潟県

    【中里エリア】

    信濃川の支流である清津川沿いに広がるエリア。清津峡は黒部峡谷(富山県)、大杉谷(三重県)とともに日本三大峡谷の一つで、国の名勝・天然記念物です。

    V字形の大峡谷を見るため1996年に整備された歩道トンネルが、前回の大地の芸術祭(2018年)にアート作品として改修され、一躍人気スポットになりました。

    トンネルの手前にある“ペリスコープ(潜望鏡)”と名付けられたこの建物も、作品《Tunnel of Light》の一部。喫茶やトイレのほか、2階は無料の足湯もあります。



    マ・ヤンソン/MADアーキテクツ《Tunnel of Light》


    トンネルの全長は750m。アート作品になる前は「移動中が退屈」という声もあったそうですが、現在では途中で照明の色が変わり、ドラマチックな空間の中を進んでいくことになります。



    マ・ヤンソン/MADアーキテクツ《Tunnel of Light》


    トンネル内は、途中に見晴所が3カ所。第1見晴所では清津川の清流が見られるだけですが、第2見晴所は“見えない泡”をイメージ。壁面のストライプ模様が中央のカプセル状の物体に映り、奥まで進むと清津川が見えます。

    カプセル状の物体は、何とトイレ。ハーフミラー状のフィルムで覆われているので、外から中は見えませんが、中に入ると外部が丸見え。用を足すのは、少々勇気がいります。



    マ・ヤンソン/MADアーキテクツ《Tunnel of Light》


    第3見晴所は“霧のしずく”。湾曲した壁に散りばめられているのは、火のような赤いバックライトで照らされた凸面鏡。

    鏡には周辺とともに鑑賞者自身も映り込み、美しい空間を演出します。



    マ・ヤンソン/MADアーキテクツ《Tunnel of Light》


    最も奥まで進むと、“ライトケーブ(光の洞窟)”に到達。手前に設けられた浅いプールに峡谷のイメージが投射され、絶好のフォトスポットになっています。

    奥でポーズを取り、手前から写真を撮るのが定番。奥まで進むには、靴を脱いで水の中を進んで行きます。

    トンネルの壁面も半鏡面仕上げのステンレススチールで覆われており、ここにも周辺の環境が映り込みます。別の季節に来ても、美しい写真が撮れそうです。



    マ・ヤンソン/MADアーキテクツ《Tunnel of Light》


    倉庫美術館は、廃校になった清津峡小学校をリニューアルした美術館。木製の床を剥いで既存のコンクリート基礎を現し、壁の内側に新しいコンクリート壁を建てるというユニークな手法で、現代美術に相応しいニュートラルな空間にしました。

    芸術祭の会期中は、芸術祭に参加している作家の多様な作品を展示。作品の購入も可能です。



    《磯辺行久記念 越後妻有清津倉庫美術館[SoKo]》内の企画展「大地のコレクション展2022」


    旧小学校のプールには、翼の生えた木が伸びている黄色いピアノ。鑑賞者にプールに降りてもらい、ピアノに触り、音を聴くように誘います。

    奏でたピアノの音色はプールに反響し、世界中で録音されたフィールドレコーディングの音と混ざりあい、不思議な空間を作り出します。



    joylabo《プールの底に》


    階段を上ると、正面に見えるのがレースのカーテンがついた窓。窓から見える風景を通して、外に広がる妻有の風景をもう一度発見するための窓です。

    作家の内海昭子は、自然を邪魔することなく慎ましく咲く花のような作品を目指したそうです。



    内海昭子《たくさんの失われた窓のために》


    2003年の作品ですが、印象深かったのが《ポチョムキン》。フィンランドの建築ユニットが手がけた、遊具や東屋がある公園です。

    立地は田んぼと川の間で、かつて廃棄物が不法投棄されていた場所。コールテン鋼の壁で囲われ、周辺の環境も含めて精神性が高い空間になっています。



    カサグランデ&リンターラ建築事務所《ポチョムキン》


    【津南エリア】

    JR飯山線の越後鹿渡駅から信濃川沿いの南西部と、中津川沿いのエリアです。

    越後妻有「上郷クローブ座」は、旧津南町立上郷中学校をパフォーミングアーツの拠点として整備したもの。旧校舎には巨大なバルーンの梯子が掛けられています。



    パオラ・ピヴィ《Untitled project for Echigo-Tsumari》


    教室にはいくつか作品がありますが、印象的だったのがこちら。古民家をかたどった舞台で、動物の姿をした自動人形がバンドを組んで演奏します。

    作者はフランスのニコラ・ダロ。自動で動くオブジェなどを幅広く制作しています。



    ニコラ・ダロ《上郷バンドー四季の歌》


    こちらは、紙から切り出した作品。モチーフは菌や植物などの顕微鏡イメージです。

    テグスで吊られたオブジェは軽いため空気の流れで動き、平面でありながら立体的。オブジェの影も含めて、不思議な存在感を放ちます。



    早崎真奈美《Invisible Grove 〜不可視の杜〜》


    賑やかな音を奏でるのは、地元から譲り受けた古い農具たち。農具や民具の形は残し、かつての使用方法も踏襲した上で、電気仕掛けの楽器になりました。

    岡淳はプロのミュージシャンとして活動する傍ら、2013年に音楽水車プロジェクトをスタート。音楽を奏でる水車の制作に取り組んでいます。



    岡淳+音楽水車プロジェクト《農具は楽器だ!》


    地下のゲートボール場で悠然と泳ぐのは、イワシの群れと、それを狙っている巨大なホオジロザメ。手前には立派なタカアシガニも鎮座しています。

    素材は、地域の工務店や製材所で不要になった木材。それらを組み合わせて、等身大の動物をつくりました。



    加治聖哉《廃材水族館:竜ヶ窪》


    中里と津南で見てきた作品も動画にしています。



    「全部を回るのは難しい」といった手前もあるので、絶対に見逃せない場所として、5カ所をピックアップしました。あくまでも私見ですが、参考にしてください。


     1.越後妻有里山現代美術館 MonET【十日町エリア】
     2.松代城【松代エリア】
     3.まつだい雪国農耕文化村センター「農舞台」【松代エリア】
     4.清津峡【中里エリア】
     5.磯辺行久記念 越後妻有清津倉庫美術館[SoKo]【中里エリア】


    [ 取材・撮影・文:M.F. / 2022年7月30日~8月7日 ]


     → 越後妻有 大地の芸術祭 2022(レポート その1 十日町・川西)

     → 越後妻有 大地の芸術祭 2022(レポート その2 松代・松之山)

     → 越後妻有 大地の芸術祭 2022(レポート その3 中里・津南)


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    会場
    越後妻有地域(新潟県十日町市、津南町) 
    会期
    2022年4月29日(金)〜11月13日(日)
    会期終了
    開館時間
    10:00~17:00(10・11月は10:00~16:00)
    ※各作品によって公開日・公開時間が異なる場合あり
    休館日
    全期間を通じて、火・水曜日は休みとします(一部作品施設は通常営業) ※ 5月3日(火)・4日(水)は祝日のため開催
    住所
    越後妻有地域(新潟県十日町市、津南町) 
    公式サイト https://www.echigo-tsumari.jp/
    料金
    ・通常料金 一般4,500円/大学・高校・専門3,500円/中学生以下無料
    展覧会詳細 「越後妻有 大地の芸術祭 2022」 詳細情報
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