「かわいい」「かっこいい」などのキーワードとともに、近年、再び注目を集めている「縄文の美」。東京国立博物館では、総合文化展(常設展)でもさまざまな縄文土器を展示していますが、本展では大規模な企画展で、縄文の魅力を掘り下げていきます。
会場は、道具として表現された美を紹介する第1章「暮らしの美」から。漆で描かれた文様、機能的な銛頭(モリの先端部分)、貝でつくられたブレスレットなどが並びます。
第2章「美のうねり」から、いよいよ本格的な縄文土器が登場。露出展示もあって、見ごたえがあります。
縄文時代の名前の由来になった縄目文様は、縄文時代草創期後半から見られるようになり、中期になると立体的な装飾に。後期・晩期には沈線(ちんせん:掘った線)で描く文様が増えます。
世界史の中で縄文時代を考察するのが、第3章「美の競演」。縄文文化は世界最古級の土器で、世界の先史土器の中でも群を抜く造形美でもあります。
第1章「暮らしの美」、第2章「美のうねり」、第3章「美の競演」展示室2は、本展イチオシの国宝展示である第4章「縄文美の最たるもの」から。縄文時代の遺跡は9万件以上ありますが、出土品で国宝に指定されているのはわずか6件。その6件が初めて一堂に会します。報道内覧会時に展示されていたのは4件でしたが、それぞれがとても力強い造形。7月31日(火)からは残る2件も展示され、6件揃い踏みとなります。
第5章「祈りの美、祈りの形」は、命を育む女性をかたどった土偶や、男性を象徴する石棒など。白をベースに炎が燃えるような演出の美しい会場デザインに、土器や土偶が映えます。有名な《ハート形土偶》《遮光器土偶》(ともに重要文化財)も、ここで展示されています。
なかには、母体から新生児が生まれる瞬間を表したともいわれる土器も。現在よりずっと困難だった考えられる、縄文時代の出産。それだけに、誕生の喜びもひとしおだったのでしょうか。
第6章は「新たにつむがれる美」。柳宗悦、芹沢銈介らに愛された土偶らが紹介されています。縄文の魅力を強く発信したのが、「芸術は爆発だ」の岡本太郎。太郎が東京国立博物館で出会い、衝撃を受けた縄文土器も展示されています。
第4章「縄文美の最たるもの」、第5章「祈りの美、祈りの形」、第6章「新たにつむがれる美」はるか昔の私たちの先祖が生み出した、縄文美の世界。「美しいものを求める」という行為が、極めて原始的な感覚である事にも驚かされます。
展示されている土器や土偶が出土したのは北海道から沖縄までと実に広範囲で、私の地元から見つかったものも展示されているなど、意外な発見もありました。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2018年7月2日 ]