2020年1月から改修工事のため休館していた泉屋博古館分館が、館名を「泉屋博古館東京」に改めてニューアルオープン。
再開記念の展覧会では、住友の日本画コレクションの全貌を展観。大阪・京都・東京の三都で活躍した画家の作品を紹介していきます。
泉屋博古館 外観
会場は「面の東京」からスタート。首都である東京は欧米を意識せざるを得ないこともあり、絵画の世界も急進的に進みました。一方で、保守派との対立も顕著に現れています。
狩野芳崖は寿老人を得意にしていますが、展示されている作品は最大級。並んで紹介されている橋本雅邦《深山猛虎図》は2年に渡る修復後、初お目見えとなります。
(左から)狩野芳崖《寿老人図》明治10年代前半頃 / 橋本雅邦《深山猛虎図》明治23年頃[ともに全期間展示]
次の展示室では、三都の作品を並べて紹介。4月10日までの前期は美人画です(後期は花鳥画)。
目を引くのは、大阪の上島鳳山による12幅。今では忘れられつつある市井の画家ですが、女性の色香が漂ってくるような作品です。表具の裂地が3幅ずつ変わっているのもお見逃しなく。
上島鳳山《十二ヶ月美人》明治42年[展示期間:3/19~4/10]
続いて「線の京都」。明治維新にともなう東京奠都で、中央の座を失った京都。画壇もつねに東京を意識する事になります。円山応挙から続く写生を重視する姿勢は、近代化以降も残りました。
原田西湖《乾坤再明図》は、天岩戸を開かせた天鈿女命(あめのうずめ)を描いた作品。第5回内国勧業博覧会に出品されました。
原田西湖《乾坤再明図》明治36年[全期間展示]
そして「点の大阪」。言うまでもなく、大阪は商人の町。商家に相応しい画題と、床映えする鮮やかな作品が多いのが特徴といえます。
村田香谷は、関西南画界の重鎮。住友家とは画家とパトロンという関係を超えた繋がりがありました。《西園雅集図》は、中国を3回も訪れた香谷の代表作です。
村田香谷《西園雅集図》明治37年[全期間展示]
新設された展示室4では、住友春翠(1865-1926)と日本画について。公家・徳大寺家に生まれた春翠は婿養子として住友家に入り、15代当主に。家業の近代化と発展に尽力しました。
日本の伝統文化に親しみ、数奇者としめ古美術を収集。煎茶趣味を通して、同時代の南画家とも交流を深めました。
(左から)村田香谷《竹石図》明治43年[全期間展示] / 望月玉泉《蘆雁図》明治40年[全期間展示] / 尾竹国観《黄石公張良之図》明治45年頃[展示期間:3/19~4/10]
展示スペースが広がり、カフェやミュージアムショップ、講堂が新設された泉屋博古館東京。照明がLEDに変わった事もあり、作品も見やすくなり、とても居心地が良くなりました。
リニューアルオープン記念展の第2弾は近代洋画、第3弾は東洋美術と続きます。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2022年3月18日 ]