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    上村松園・松篁 美人画と花鳥画の世界
    山種美術館 | 東京都

    2021年に開館55周年を迎えた山種美術館。1年間にわたり開催してきた記念展の最後を飾るのは「上村松園・松篁 —美人画と花鳥画の世界—」です。

    山種美術館と縁の深い日本画家・上村松園(しょうえん)とその長男で生誕120周年を迎える上村松篁(しょうこう)は、親子二代で文化勲章を受章した人物でもあります。 二人の逸品が一堂に会する展示は今回が初めてです。さらに現在も活躍する松篁の長男・上村淳之(あつし)の作品や、同時代の画家による優品の数々を東京で一度に見られる貴重な機会となっています。

    都心のコンパクトな美術館に広がる、美人画と花鳥画が織りなす華やかな世界。そこで感じられたのはたゆみない美の探究心と、今も昔も“花鳥”に魅せられる人々の姿でした。



    色とりどりの美人画が並ぶ贅沢な空間


    上村松園は美人画の名手として知られ、気品あふれる女性像の表現が魅力的です。 京都画壇で活躍し、1948年には女性として初めて文化勲章を受章しました。「西の松園、東の清方」と称されるように鏑木清方とも並んで評価されています。 山種美術館を設立した山﨑種二は松園と親しい交流があり、蒐集した作品は松園コレクションとして知られるものです。

    やわらかな生え際や繊細なまつ毛、美しさの決め手にもなる眉、優しげな虹彩に瞳孔がくっきりとした瞳の描き方が印象的で、優美ながらも凛とした女性のイメージを感じられます。 写生や古画の学習を通じて研究したといわれる髷(まげ)の描き分けにも注目です。



    優しげなパステルカラーの着物も印象的。


    江戸風俗を丹念に取材し、髪型や装飾品を描くスタイルも特徴的です。 たとえば《桜可里》は菱川師宣の《上野花見の躰》に同様の図があり、参考にしたと考えられています。 《春のよそをひ》に見られる、かんざしに手を添えるポーズは喜多川歌麿の浮世絵に影響されたようです。



    浮世絵の祖・菱川師宣の作品を参考にしたと言われる《桜可里》


    美しい着物のデザインも見どころの一つです。実際の染色技法を意識しながら描写しており、《蛍》にみられる鹿の子絞りのような細かい模様も丁寧に仕上げています。松園の着物へのこだわりが感じられるポイントです。



    《蛍》は涼しげな色や質感をイメージして描いた作品。


    同時代に活躍した他の日本画家たちの名品と比べてみると、松園の魅力がさらにわかります。松園の弟子・伊東深水は《春》や《婦人像》のようなモダンな女性像で人気を博した画家で、橋本明治は《秋意》のように線の太いスタイルが独特です。松園の絵は古典に学んだ雅やかさや柔らかさに独自性があると捉えられます。

    展示室の中ほど、三輪良平や青山亘幹による舞妓図が並んだスペースはまさに華麗なる競演そのもの。

    ここでも画家によってさまざまなスタイルがあることに驚かされ、表現の幅広さから日本画のさらなる可能性にも気付かされます。



    青山亘幹 (左から)《舞妓四題のうち「11月」》 / 《舞妓四題のうち「正月」》


    こうして日本画に新たな境地をもたらした松園に続く、息子の上村松篁も洗練された格調高い作品で京都画壇を牽引した人物の一人です。

    幼少期から金魚や小鳥を愛で、物心つく頃には花鳥画家を志していた松篁。母から絵を教わってはいないものの、作品から生じる品の良さは身をもって示されたといいます。



    上村松篁《日本の花・日本の鳥》© Atsushi Uemura 2021 / JAA2100291


    にじむような柔らかなタッチで四季それぞれの彩りが豊かに描かれ、身近でありながらどこか童話のような世界を感じさせる作品たち。 松篁の作品だけを小空間に集めた展示室には、幻想的な雰囲気が満ちあふれます。

    ショップでは、美術館巡りのお土産にもぴったりなオリジナルグッズが豊富です。 美しい日本女性をイメージした3種類の香りの「お香セット」や、春のシーズンにおすすめの「〈川勝總本家〉桜の花漬」などは、展覧会の世界観とも合わせてお楽しみいただけます。



    華やかさや瑞々しさ、内に秘めた力強さを表現した3種類のお香がセットに。



    ちらし寿司やクッキーにも使える「桜の花漬」は春らしい一品。


    展覧会ごとに出展作品をモチーフにした和菓子を取り揃えるミュージアムカフェ「Cafe椿」では、桜や雪解けをイメージした、春の訪れを感じさせる特製和菓子を提供しています。季節のお茶や抹茶と一緒にいただけば、ほっと一息つけますね。



    左上「誰が袖」右上「雪輪」中央「花のいろ」右下「春の風」左下「雪の日」


    「花鳥風月」とも言われるように、花や鳥は昔から人びとの暮らしに身近なものであり、生活の中で美を感じられる存在だったことが想像できます。かわいらしい鳥を籠に入れて飼ったり、器に季節の花を飾ったり、そうした日常的な美意識の表れた芸術こそが花鳥画とも言えるのでしょう。

    四季の移ろいとともに古くから育まれた人びとの感性は、現代にも受け継がれていると実感できる展覧会です。一足早い春の訪れを感じに、足を運んでみてはいかがでしょうか。


    [ 取材・撮影・文:さつま瑠璃 / 2022年2月8日 ]

    ©ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2021.


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    会場
    山種美術館
    会期
    2022年2月5日(土)〜4月17日(日)
    会期終了
    開館時間
    10:00~17:00(入館は16:30まで)
    休館日
    月曜日[3/21(月)は開館、3/22(火)は休館]
    住所
    〒150-0012 東京都渋谷区広尾3-12-36
    電話 050-5541-8600(ハローダイヤル)
    料金
    一般1300円、中学生以下無料 (付添者の同伴が必要です)
    [春の学割]大学生・高校生500円※本展に限り、特別に入館料が通常1000円のところ半額になります。
    障がい者手帳、被爆者健康手帳をご提示の方、およびその介助者(1名)1100円
    ※きもの特典:きものでご来館された方は、一般200円引きの料金となります。
    ※複数の割引・特典の併用はできません。
    展覧会詳細 「上村松園・松篁 美人画と花鳥画の世界」 詳細情報
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