1997年に第1巻が出版されてから世界的ベストセラーとなり、全7巻が刊行され、8本の大ヒット映画にもなった「ハリー・ポッター」シリーズ。主人公、ハリー・ポッターが魔法魔術学校に通いながら成長し、闇の魔法使いヴォルデモートに立ち向かうストーリーです。
2017年~19年にかけて、ロンドンとニューヨークで開催された展覧会「ハリー・ポッターと魔法の歴史」が遂に東京に巡回しました。
「ハリー・ポッターと魔法の歴史」 会場入口 (右)ジム・ケイ 《『ハリー・ポッターと賢者の石』の9と3/4番線の習作》 ブルームズベリー社蔵
会場は、ハリーが通うホグワーツ魔法魔術学校の科目に沿って構成。魔法にまつわる歴史を「錬金術」、「薬草学」などの10章で紹介します。ハリーと一緒にいくつかの授業を学んでいきましょう。
第1章「旅」では、トレードマークの眼鏡をかけた少年・ハリーのほか、魔法学校の校長・ダンブルドアとハリーが過ごした寮の寮監・マクゴナガルを紹介します。
(左から)ジム・ケイ 《アルバス・パーシバル・ウルフリック・ブライアン・ダンブルドア教授の肖像》 / ジム・ケイ 《ミネルバ・マクゴナガル教授の肖像》 / ジム・ケイ 《ハリー・ポッターの肖像のスケッチ》 すべてブルームズベリー社蔵
最初に習うのは、魔法薬学。魔術を扱うためにクスリの調合は必要な不可欠な技術です。ハリーにとっては、得意な科目とは言えなかったようですが、万が一毒を盛られた時のために“ベゾアール石”は常備する必要があります。
(左から)ヤコブ・マイデンバッハ 『健康の庭』ストラスブール、1491年 大英図書館蔵 / ジム・ケイ 《セブルス・スネイプ教授の肖像》 ブルームズベリー社蔵
魔法薬の材料となる植物とその正しい栽培方法が身につくのは「薬草学」です。授業で登場する植物は、実際の辞典にも載っている重要な薬草ばかり。薬草のほとんどは、治療薬として利用されますが、危険な植物を扱うための手袋と耳当ては、授業での必需品です。
(左から)『花彙』日本、1750年 / 『毒草』中国、19世紀 / レオンハルト・フックス 『植物誌』バーゼル、1542年 すべて大英図書館蔵
魔法を使う“道具”として登場するのは、杖や箒です。2階の第5章では、鍵のかかった扉をあける「アロホモーラ」やものを宙にうかす「ウィンガーディム レヴィオーサ」など杖を使った呪文や、箒の乗ったハリーの姿、箒に乗る19世紀の魔女の図を紹介します。
ジム・ケイ 《クィディッチをするハリー・ポッターとドラコ・マルフォイの習作》ブルームズベリー社蔵 / 「オルガ・ハントの箒」魔術・魔法博物館蔵
儀式や専門的な道具を使い、未来を予測するための「占い学」も学びます。 何千年もの間、様々な方法が試行錯誤されてきましたが、水晶玉や手相、タロット、茶葉占いは現在でもよく知られた占いです。
ジム・ケイ 《シビル・トレローニー教授の肖像》 ブルームズベリー社蔵 / 「黒い水晶玉(ムーン・クリスタル)」20世紀 魔術・魔法博物館蔵 / 「水晶玉と台」19-20世紀 魔術・魔法博物館蔵
「タロットカード一式」スイス、1970年代 魔術・魔法博物館蔵
邪悪な力から守るために用いる魔法「闇の魔術に対する防衛術」について学ぶのは、第8章。 狼人間やバジリスクなどの暗黒生物に対しても防御が期待される大切な授業です。
(左から)ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス 《魔法円》1886年 テート蔵 / ジム・ケイ 《ハリー・ポッターとバジリスクの習作》ブルームズベリー社蔵
「魔法生物飼育学」では、神話の生き物とされている一角獣(ユニコーン)や不死鳥(フェニックス)、竜(ドラゴン)についても学びます。優秀だった生徒は、教科書の著者でもあるニュート・スキャマンダーのように、魔法動物学者への道があるかもしれません。
「龍ミイラ」日本、1682年寄贈(?) 瑞龍寺(通称 鉄眼寺)蔵
「ハリー・ポッター」シリーズは85以上の言語に翻訳され、累計発行部数は5憶冊を超える世界中で愛されている作品です。最終章の「過去、現在、未来」では、各国で販売された書籍や衣装も紹介されています。
「ソニア・フリードマン、コリン・カレンダー、ハリー・ポッター劇団による『ハリー・ ポッターと呪いの子』ロンドン劇団のオリジナル衣装」『ハリー・ポッターと呪いの子』ウエスト・エンド・プロダクション蔵
ハリー・ポッターの19年後のストーリーを描いた舞台劇「ハリー・ポッターと呪いの子」も2022年に東京で開催される予定です。
これまで本や映画を見損ねていた方も、展覧会をきっかけにハリー・ポッターの世界を体感してみてはいかがでしょうか。
[ 取材・撮影・文:坂入 美彩子、古川 幹夫 / 2021年12月17日 ]