ゴッホを中心に「文化財を知る・楽しむ」をテーマに、クローン文化財の活用を紹介する展覧会が開催されています。
油彩画や浮世絵などクローン文化財だからこそできる新たな楽しみ方を紹介。夏休み期間は、小・中学生の宿題にも役立つ特別企画も用意。子供も大人も楽しめる展覧会です。
会場入口
さまざまな角度から作品を体感
37年の人生を駆け抜けたゴッホ。10年の短い画業の中に潜む様々な謎を紐解きます。
会場風景 謎解きパネルをチェック
オルセー美術館の名画を間近で
マネ・ドガ・モネ・セザンヌなど、印象派、ポスト印象派の巨匠の絵画がずらりと並びます。白いボードは3D計測技術によって、表面の凹凸を再現したものです。
ゴッホと比べてみよう
こちらは、モネの絵の凹凸を再現した白いパネル。ボード前方の絵画を見ながら、筆のタッチや厚塗りの状態を観察してみましょう。
クロード・モネ《睡蓮の池 緑のハーモニー》
立体の再現は、マネの絵から笛を吹く少年が飛び出しました。スーパークローン文化財の技術は立体表現を豊かに浮かび上がらせます。
エドゥアール・マネ 《笛を吹く少年》(再現) オルセー美術館 1866年
ゴッホが見た夜の光は?
夜の光に魅せられてゴッホは星月夜を描きました。実際に見ていた光はどんな色だったのでしょうか?明るい場所、暗い場所で見る絵の印象は違います。あたりを暗くしたブースで、ゴッホが見た光に近い色を体験できます。
フィンセント・ファン・ゴッホ 《ローヌ川の星月夜》(再現)オルセー美術館 1888年
浮世絵を模写したゴッホ
絵画の学習は「模写」が伝統的な学習法です。ゴッホは浮世絵も模写しました。それは単なる模写でなく、絵画の一部や背景に浮世絵版画の図像を加えました。
作品の周囲に漢字を装飾的に描き、緑と赤の縁で画面を囲み補色効果を強めています。浮世絵の影響を受けつつ、先鋭的な構図と強烈な色彩感覚をもつ画家への足掛かりになりました。
フィンセント・ファン・ゴッホ《ジャポネズリー 雨の大橋》
日本にあった“芦屋の《ひまわり》”
大正時代、西洋美術が知られていない時代に、ゴッホのひまわりが日本に存在していました。しかし1945年、空襲で焼失。今回、幻の《ひまわり》が甦り初公開です。100年前になぜ《ひまわり》が日本に? 謎解き解説は青い日記帳さんです。
会場風景 カリスマブロガー青い日記帳さんによる謎解き解説
ゴッホがたくさんのひまわりを描いたのはなぜ? 背景をブルーにしたのは? 再現された《ひまわり》を前にじっくり考えながら解説を・・・
会場風景 芦屋の《ひまわり》謎解き解説
またどのように《ひまわり》を甦えらせたのでしょうか?筆致や絵の具の厚みを研究し、最終的には手作業で、一筆一筆描く細やかな作業を映像で紹介しています。
甦るひまわり
改めてひまわりの、筆のタッチを見て下さい。ゴッホはこの筆跡に何を込めたのでしょうか?またこの絵をぜひ日本に紹介したいと思った先人の驚き、そして今、それらを再現した人たちの思いが、厚く塗り重ねられているのを感じます。
フィンセント・ファン・ゴッホ《ひまわり》(再現)(部分) 原本年代 1888 年 /1945 年焼失
スーパークローン文化財は、最新デジタル技術によって、文化財保護に一役を買っています。その裏には模写という熟練のアナログ技術も欠かせないことがわかります。技術と人の目や手によって、文化財がつくられつながってくことも見えました。
※展示作品はすべてクローン文化財・スーパークローン文化財(調査研究に基づく再現・復元。部分・拡大縮小の作品を含む)
[ 取材・撮影・文:コロコロ / 2021年7月31日 ]
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