キリスト教に次いで世界で2番目に信者の多い宗教・イスラーム教。 7世紀に預言者・ムハンマドを通して掲示されたイスラーム教は、北アフリカから中国西部、マレー世界ヘ拡大し、大きく発展を遂げていきます。
マレーシア・イスラーム美術館の全面協力のもと、美術工芸品や宝飾品の展示を通して、イスラーム文化への理解を深める展覧会が、東京国立博物館 東洋館で開催中です。
会場入口
会場では、世界規模に広がりをみせたイスラームの美術を15章に細かく分けて展示されています。ここでは、いくつか目に留まったコーナーをご紹介します。
第1章には、今回紹介される王朝や象徴となる地域の作品が1点ずつ並び、展覧会全体の流れを把握することができます。
第1章 はじめに:ムスリム世界の歴史と文化
イスラーム教と聞くと、モスクを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。ムスリムでは1日5回の礼拝を行いますが、毎週金曜日の昼は、集団礼拝のためモスクへ訪れます。
第3章では、モスク内部で使われるランプや聖典「クルアーン」を読み解くための台が飾られ、礼拝空間が再現されています。
第3章 モスクの美術
イスラーム文化圏の広がりは、中近東だけでなくスペインや北アフリカまで拡大し、地域によってさまざまな発展を遂げていきました。少しずつ異なる歴史や文化を感じることができるのも、今回の展覧会の見どころです。
第4章 北アフリカおよびスペイン
本展のバナーにも使用されている、鮮やかなターコイズブルーが目を惹くタイル。これは、14~15世紀につくられたものです。濃淡のあるタイルを貼り合わせてつくられたパネルは、モスクの壁に設置。イランや中央アジアの建築によく見られます。
第7章 イル・ハーン朝とティムール朝
第9章のテーマは、武器と外交。王族や貴族は、戦闘の道具としてだけでなく、権威の象徴として武器や武具を身につけていました。例えば、象嵌とよばれる、金や銀をはめ込んだ金工の装飾技法を用いて、動植物の意匠を表現しています。
第8章 サファヴィー朝とカージャール朝 / 第9章 武器と武具
一方、啓典を書写するための“書道”も重要な役割を担っています。書家は長い年月をかけて、インクの調合から文字の書き方、彩飾や装丁などの技術を習得しなければなりません。イスラーム書道の世界では、カラムとよばれるペンが書家の剣であり、インク壺があらゆる道具の母であると称されほど、重要であったことがわかります。
第11章 イスラーム書道芸術
“書”の伝統は今も受け継がれ、独自の存在感を追求した新たな作品が生み出されました。 会場には、大きなカンヴァスを用いて描かれたグローバルに活躍する作家の現代絵画が並んでいます。
第10章 現代絵画
室内の奥には、ムガル朝を代表する宝飾品もあります。インド亜大陸を支配したムガル朝は、イラン文化とインドの伝統が融合し、新しい様式が誕生。豊富な鉱物資源に恵まれたインドでは、ネックレスやイヤリング、ブローチなどの豪華な装飾品が製作されました。
第13章 ムルガ朝
様々な時代や地域を超えたイスラーム文化が凝縮された会場は、撮影も可能。鮮やかな作品とともに、各地のイスラーム文化に浸ることができる空間です。
[ 取材・撮影・文:坂入 美彩子、古川 幹夫 / 2021年7月12日 ]