会場:東京都庭園美術館
ロシアで誕生した「構成主義」を中心とした20世紀のポスター展が、東京都庭園美術館で行われています。 ここで展示されているポスターは、株式会社竹尾のポスターコレクションで構成されています。
左から:エルンスト・ケラー《製本業/チューリッヒ市立工芸美術館》1934年、アルミン・ホフマン《建築用木材展/バーゼル工芸博物館》1952年、アルミン・ホフマン《バーゼルと未来の街並展/バーゼル工芸博物館》1961年
前半のポスターはとてもシンプルで、文字だけで構成されているものや、線や図形だけで構成されているものが多くみられました。
展覧会を監修された佐賀一郎氏の解説によると、ポスターは戦争中にプロパガンダに利用されていた苦い歴史があり、その反省や反動から、必要最低限の情報を客観的に伝えることを意識し、情報の判断を受け取り側にゆだねようとしていた時期があったそうです。
会場風景
本展は、なぜか年代や国など統一されずにランダムに展示されています。
けれど隣同士のデザインが活かされているように配置されていて、美しい美術館のインテリアのひとつとなっているかのように展示されています。
エル・リシツキー《ソヴィエト連邦展/チューリッヒ工芸美術館》1929年
本展のテーマである「構成主義」は、1910年代にロシアで生まれたもので、ロシア革命という新しい時代を反映したシンプルでモダンなデザインです。
のちには社会主義的リアリズムが主流となり、本国ではつらい立場におかれました。 そのため国を逃れた作家たちを中心に、「構成主義」はヨーロッパの各地に広がり、そのデザインは20世紀に花開いていきました。
会場風景
構成主義のシンプルな線や図形の流れやリズムは、まるで音楽を奏でているようです。
本展の中にはコンサートを告知するポスターがとても多く、デザインと音楽の相性の良さを感じます。
左から:カール・オットー・ミュラー《ガウチョウ/フェーブス劇場》1929年頃、《第七天国/フェーブス劇場》1929年頃、シュテンベルク兄弟《隠れ家を探す6人の娘/ソフキノ(配給)》1928年、《カメラを持った男/ヴフク(制作・配給)1929年
こちらの4枚のポスターは演劇や映画のポスターです。
今では演劇や映画のポスターは、芝居の中のワンシーンや俳優さんたちのクローズアップが主流ですが、このように抽象的なポスターであると、逆にどんなストーリーなのか気になるように思います。
会場風景
新館の広いスベースでは、壁一面に並べられたポスターがまさに壮観といった感じです。
時代が新しくなり印刷の技術が向上したためか、色鮮やかなものも増えましたが、図形や文字を中心に構成された構成主義の作品は、情報をイメージ化して豊かに伝えます。
手前:エイプリル・グレイマン《伝わっていますか?/デザイン・クォータリー#133/ウォーカー・アート・センター》1986年
ポスターの役割は、まず目に留まること、そして必要な情報をわかりやすく伝えることです。
本展の副題である「ビジュアルコミュニケーションは可能か?」について、皆さんはどのように考えますか。
現代は情報を伝えるツールとして映像などの動画や音声などが氾濫していますが、ポスターが持つ文字と図形の美しさやパワーを堪能する展覧会でした。
[ 取材・撮影・文:松田 佳子 / 2021年1月29日 ]
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