初版から半世紀が経った今も、世界中で愛されている絵本「がまくんとかえるくん」の誕生50周年を記念した展覧会が、PLAY! MUSEUMではじまりました。
アーノルド・ローベル展 会場入口
展覧会は6章で構成。前半部分では、アーノルド・ローベルが手がけた数多くの作品を紹介。後半の6章では、「がまくんとかえるくん」の世界観を満喫できる空間になっています。
《ふたりは いっしょ》表紙下絵
1章の「ぼく この みちを いくよ!」や第2章「きみが いてくれて うれしいよ」では、絵本作品だけでなくローベルが絵本作家となった経緯も紹介しています。
幼い頃、病弱で孤立しがちだったローベルにとって、本が救いだったことから、絵本作家を夢見ます。美術大学を出た後は、広告会社に就職。しかし、絵本作家の夢をあきらきれず、学生時代に制作した試作本やポートフォリオをもって出版社を周り、念願の絵本作家となりました。
(左から)学生時代に制作したとされる《Petrouchka》1955年 / 《ジャイアント・ジョン》1964年
カラー印刷技術の発展途上だった60~70年代。作家は色ごとに版を書き分け、それを重ねて刷っていたため、手間と経費がかかりました。
そこでローベルは、墨版とふたつの色版を重ねることで独特な色合いを生み出します。 「いろいろへんないろのはじまり」をはじめ、ローベルの絵本は、色をアクセントとした世界観が特徴です。
《いろいろへんないろのはじまり》
第3章は、「お絵かきはデザート、お話づくりはホウレン草」。
100冊を超える絵本のうち、お話と絵の両方を手掛けたものは30冊ほど。ここでは、他の作家がつくったお話に挿絵をつけた作品も紹介しています。
アーノルド・ローベル展 会場
第4章「お説教はまっぴら」は、のびのびと暮らす動物たちが登場。床にも点在する動物たちの足跡にも注目です。
第5章「ぼくは舞台監督で、衣装デザイナーで、幕を引く者」では、キャリアの後半に手掛けた詩や童謡の挿絵が並びます。
アーノルド・ローベル展 会場
会場には、ローベルの写真や子供たちを撮影したビデオが展示されたスペースも。近くに寄ると、1981年に児童書の賞であるコールデコット賞を受賞した際のスピーチも流れ、ローベルの穏やかな人柄が感じられます。
アーノルド・ローベルの写真や子供たちを撮影したビデオ
6章からは、「がまくんとかえるくんの世界」を紹介。
正反対のキャラクターである“がまくん”と“かえるくん”が互いに支え合いながら友情を深める日常ストーリーです。シリーズのひとつ「おてがみ」の絵本パネルを読み進めながらトンネルをくぐり抜けます。
アーノルド・ローベル展 会場
多面体の段ボール製の展示台の上には、制作過程を紹介。 原画やレイアウト、赤字のはいった修正もあり、絵本が出来上がる過程を知ることができます。
アーノルド・ローベル展 会場
レイアウト
絵本は“見る”と同時に“聞く”ものでもあると言い、声に出しながらお話を書いていたローベル。 丸いカーペットの敷かれたスペースでは、シリーズ最後の物語「ひとりきり」が音声で流れ、耳でも楽しむことができます。
また、動く“がまくん”と“かえるくん”の姿も登場。加藤久仁生によるアニメーション作品では、「がまくんとかえるくん」ストーリーの一場面を堪能することができます。
加藤久仁生によるアニメーション作品
展覧会は、緊急事態宣言発令にともない、平日は時間短縮で開館。休日および混雑が予想される日は、事前決済の日付指定券(オンラインチケット)も販売しています。心温まるアーノルド・ローベルの絵本の世界に、大人もじっくり浸れそうです。
[ 取材・撮影・文:坂入 美彩子 / 2021年1月8日 ]